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《本記事のポイント》
- 東京都は7カ月ぶりに、豊洲市場関係者との協議会を開催
- 移転先延ばしで、税金は垂れ流され、関係者の感情のもつれも
- 小池知事は都民の声を優先し、早急に移転を決断すべき
築地市場の豊洲への移転問題について、東京都は11日、市場業界団体と話し合う「新市場建設協議会」を開いた。
協議会は、都と築地市場の関係者が話し合う場として2002年に発足し、これまで18回行われてきた。2016年9月、小池百合子都知事による移転延期の発表以降は開催されておらず、業界側は開催を要望していた。
今回の協議会では、都の市場問題プロジェクトチームの小島敏郎座長が示した、築地市場を約7年かけて改修する「私案」に関して異論が相次いだ。
都水産物卸売業者協会の伊藤裕康会長は、「仕事をしながら建て替えるのがいかに大変か。できるはずがない」と批判。同協会の泉未紀夫副会長も、関係者への事前調整がないまま私案が公表されたことに対して「小島氏は業界を分断した」と述べた。
豊洲が立地する自治体も反発
小島座長が示した築地市場の改修案は、目新しい構想ではない。
1991年にも、400億円かけて築地市場の改修が進められたが、総工費の見積もりが3400億円に膨らんだことで、結局頓挫した。小島座長は工事費を500億~800億円と試算しているが、その見通しが正しいのか明確な説明が要るだろう。
すでに、豊洲市場の建設には約6000億円の税金が投入されており、移転を先延ばしにしている間にも、1日約500万円のランニングコストがかかっている。判断の先送りは税金を垂れ流しにするだけだ。
豊洲市場が立地する江東区の山崎孝明区長も、11日の記者会見で、同市場を解体して売却すると私案に記されていることについて、こう反発した。
「寝耳に水の話。マンション業者に売ることがあるとすれば学校はどうする、公共施設はどうする、交通はどうする。さまざまな問題を江東区が抱える。そういった相談なしに提案すること自体、非常に憤慨している」
関係者の声と向き合い、移転に取り組むべき
移転延期や改修案により、様々な事情を抱えつつも移転に向けて団結してきた人々の心は、こじれてしまっている。東京都水産物卸業者協会の専務理事・浦和栄助氏も、日刊ゲンダイの取材に次のように答えている(10日付電子版)。
「2010年10月、当時の石原知事が豊洲移転を決断した際、一つ一つの業者に『築地市場の皆様へ』という手紙を出されたんです。揮毫付きのね。百条委の様子だと、ご本人はご記憶にないのかも知れませんが、この配慮は大きかった。皆『しかたねえな』と、嫌々ながらも『とにかく豊洲へ行こう』という思いで何とかまとまったんです。小池知事においても、築地の業者としっかりと向き合って、皆が納得のできる豊洲移転の決断を早期にしていただきたいです」
小池知事は、道路から電柱をなくす「無電柱化」など、都政に必要な政策も掲げている。しかし、豊洲問題が象徴するように、7月の都議選を意識したマスコミ受けするパフォーマンスに走っていると言わざるを得ない。
小池知事には、豊洲市場の風評被害を払しょくし、関係者の声に耳を傾け、一刻も早く移転を決断することが求められている。
(片岡眞有子)
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2017年2月9日付本欄 黒い排ガス、戦前の建物……築地に行って見えた本当の「移転問題」(前編)