農水省は戸別所得補償に関して、来年度から農地を借りて規模を広げた農家には上積み支給することを計画していたが、身内である九州農政局からそれに対して異議の声が挙がっていることを、 10日付けの朝日新聞が報じている。現在の戸別補償は農家の大小を問わずに支給加算する方針だが、農地の集約を加速させるには、対象を認定農家や規模の大きな農家に絞り込むべきであるというものだ。

確かに、農業の国際競争力を高めるためには、農地の集約による効率化は不可欠だ。しかし、本誌の「シリーズ農業再生」でたびたび取り上げてきたように、民主党政権が進める戸別所得補償はバラマキ政策にすぎず、企業家精神をむしろ失わせ、国際社会の農業政策にも逆行し、しかも農地改革を遅らせることになると指摘してきた。

日本の農家は 65歳以上がおよそ6割を占めており、不作付地と耕作放棄地など、生産が行われていない農地は2005年時点で66万5000ヘクタールにも及んでいる。今必要なのは、円滑な農地取引を妨げている農業委員会の改革や、企業による農業参入の自由化、使われていない農地の優遇税制を見直して流動性を高めるなどの政策だ。身内からも異議が出る民主党の農業政策からは、日本の農業の未来ビジョンがまったく見えてこない。(雅)

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