By White House photo office(Wikimediaより)

《本記事のポイント》

  • ギングリッチ氏が「サッチャーこそトランプ政権の本当のモデル」と指摘
  • サッチャーもトランプ氏も一般国民の味方だった
  • 個人や国家が「自己責任」を取れる経済政策が必要

「大幅減税」「インフラ投資」などの経済政策を打ち出すトランプ米大統領は、同様の経済政策を取り「強いアメリカ」を掲げたロナルド・レーガン大統領になぞらえられることも多い。

そんな中、アメリカの元下院議長でかつて大統領選に立候補した経験もあり、トランプ政権移行チームの副委員長も務めた共和党のニュート・ギングリッチ氏がこのほど、ワシントン・ポストに「イギリス元首相のマーガレット・サッチャーこそ、トランプ政権の本当のモデル」と寄稿した。

「レーガン大統領はソ連崩壊の立役者として注目されるが、ポリティカル・コレクトネスやエリート・メディアの圧力を打破したわけではない」と指摘。「トランプは、権力機構と左翼思想にとって致命的な脅威となっている。左翼はそのことを分かっており、ちょうど、サッチャーが出てきた時にイギリスの左翼が反応したように反応している」とした。

ギングリッチ氏は、トランプ氏の就任後、左派の反トランプデモの下品な様子や「ホワイトハウスを潰せ」といった主張が、「多くのアメリカ人を寄せ付けなかった」ことと、1987年のイギリスの総選挙の際に、労働党がサッチャー率いる保守党への敵意をむき出しにするあまり「loony left(狂った左派)」と言われたことの共通点を指摘している。

一般国民の本心を代弁した両者

寄稿の中でギングリッチ氏は、「サッチャーは、社会主義が、イギリスの成功の核心にある自己責任の精神や勤勉さ、また企業家精神を破壊していると信じていた」と指摘している。

振り返れば、サッチャーが初めて首相になった1979年当時、イギリスでは労働組合の影響力が大きすぎて産業が弱り、事実上の失業者が増える一方だった。また、多発するストライキにより、労働組合員やその家族、一般市民の生活に支障が出ていた。こうした現実を見据えたサッチャー政権の労働組合改革はイギリス国民の共感を得たのだった。

このたびのアメリカ大統領選でトランプ氏は、首都ワシントンに利益が集中し、国内の雇用が失われていることを指摘。企業の国内回帰による雇用創出を打ち出し、労働者層を中心に支持を集めた。就任演説では、「生活保護を受けている人に仕事を与え、アメリカの労働者の手と力で国を再建する」と訴えている。

両者とも、本質的な国民のニーズは、過剰な保護ではなく、「自分たちの生活に、自分たちで責任を持てるようにする」というところにあると確信していたと言えるだろう。

自立した国家だからこそ手を組める

かつてサッチャーは、自国の主権を脅かされるとして欧州統合に反対していたが、イギリスはEU離脱によって自国の主権を取り戻すという道を歩み始めている。トランプ大統領は就任後初の首脳会談をイギリスのテリーザ・メイ首相と行い、米英の二国間貿易協定を進める意向を確認した。自国に責任を持てる国をつくった上で、貿易関係を構築するという発想が伺える。

トランプ氏とサッチャーの共通点から、あらゆる国家における「個人や国家が、自分に対して責任が取れるようになる経済政策」の必要性を考えさせられる。

(河本晴恵)

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