4・5日、タイとカンボジアが領有を争う国境未確定地域であるヒンズー教寺院プレアビヒア周辺で両国軍が交戦し、少なくとも両国兵士1人ずつとタイ人1人が死亡した。5日、両国軍は停戦に合意したが、両国政府は互いを非難するコメントを発表しており、緊張は続いている。

同地域での国境問題は08 年7月、ユネスコが同寺院をカンボジアの申請に基づいて世界遺産に登録したことがきっかけで表面化し、同地域で両国軍が展開・対峙して以来、散発的に衝突が起きてきた。今回は4日に両国外相が会談した直後の衝突だっただけに、問題解決の難しさが突き付けられた。

問題の背景にはタイ国内での強硬派の台頭があり、解決はタイ情勢に左右されるだろう。タイでは近年、タクシン元首相を支持するタクシン派と反タクシン派の対立が続き、反タクシン派である現政権に対するタクシン派の反対運動が問題となってきた。

しかし昨年末に反タクシン派の市民団体「民主市民連合」の幹部が国境地帯を視察してカンボジア軍に拘束されたことで、今年に入り同連合も現政権を「弱腰」として反政府運動を始めた。こうして現政権は両陣営から退陣要求を突き付けられる形になり、タイ情勢は不安定さを増している。

5日には同連合が首都バンコクで5000 人規模の集会を開き、政権に退陣を求めた。タイでは集会の自由が重んじられ、市民による政治活動が盛んであること自体はよいが、デモ隊の行動は過激さを増し、経済的損失も大きく、国際社会からの評価低下も懸念される。(由)

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