カジノを中心とした統合型リゾートを推進する法案、いわゆる「カジノ法案」が、このほど衆院内閣委員会で可決された。14日まで延長した今国会での成立を目指している。

本法案を巡っては、野党は反対の立場だが与党にも慎重な意見が多い。賛成の理由として最も大きい点は経済効果だ。建設需要や雇用創出、外国人観光客などが増えることで地域振興にも寄与するという。

一方、慎重派の意見は、本当に経済効果があるのか、民間のカジノ運営業者に、公営ギャンブルと同じような公益性が認められるのか、ギャンブル依存症が増加したり、暴力団などの反社会的勢力が立ち入るなどして治安が悪化したりする危険性はないか、というものだ。

人間の尊厳としての「勤労」

「カジノ法案」の経済効果や公益性には、やはり疑問符がつく。

通常、民間業者が賭博場を開き、賭博で利益を得たら、「賭博開帳図利(とり)罪」に当たり、3カ月以上5年以下の懲役に処せられる。そこで賭博をした人も罪となり、処罰の対象だ。それが、国が認めたら許されるというのはおかしいのではないか。

さらに、カジノが各地にできることで、日本人の美徳である「勤勉さ」に大きな影響を及ぼすことが懸念される。

韓国は、1967年に外貨獲得の目的で国内にカジノを解禁した。しかし、さまざまな不正が発覚した結果、2年後には外国人専用となり、現在でも国民が利用できるカジノは1つに限られている。

対策は取られているものの、実際にはカジノ中毒者が多発し、賭博中毒センターの利用者はこれまでに約5万人にも上るという。また、自身の財産を売り払った結果、ホームレスとなってカジノ周辺に住みこむ人も少なくないという。

カジノの解禁は、堕落した国民が増えることを示唆している。国内にカジノをつくった場合、日本も他人ごとではいられないだろう。

「働かずに一儲けしたい」。誰もが一度は頭をよぎる考えかもしれない。カジノが合法化されれば、政府は多くの国民を堕落させる道を意図せず開いてしまうだろう。

経済効果や政府の収入増加を目的としたカジノ解禁が、国民から勤勉さを奪うことにつながるなら、それは本末転倒と言えるのではないだろうか。

日本国憲法では国民の果たすべき義務として「勤労」を定めている。もちろん、憲法制定以前から日本人は「勤労」を重んじる姿勢を持っており、諸外国が驚くほどの経済成長を遂げてきた。単に稼ぐための労働ではなく、仕事を通して社会に貢献する喜びは、人生の使命にも通じるものがある。

各人の創造的な仕事によって国民一人ひとりが国を形成し、さらなる発展へとつなげることこそ「勤労」に隠された「徳」の部分ではないだろうか。

日本の良さを生かしきる国家戦略を

また、暴力団の出入りや治安の悪化という面も懸念される。カジノ建設と治安悪化には直接的関係はないという指摘もあるが、風紀が乱れることは明らかだ。カジノ周辺に子供たちや青少年たちを近づけたくはないだろう。

日本の犯罪率の低さと治安の良さは、それだけで多くの外国人にとっては魅力のはず。カジノを国内に建設することで外国人観光客を呼び込み、経済発展につなげようとする考え方は、日本の良さを十分に理解していないことに起因するのではないだろうか。

カジノなどなくても、日本には豊富な観光資源がいくらでもある。日本の持つ歴史や文化に着目し、新たな観光ビジネスを民間企業が主体となって展開すれば、経済発展はできる。

問題の多い「カジノ法案」よりも、民泊などの規制緩和を進め、観光客を呼び込むべきだ。

民間企業の自由な経済活動を後押しすれば、結果として政府の収入も増える。目先の収入増加ではなく、先を見据えた国家成長戦略を考えたい。(詩)

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