政府は、2020年の東京五輪までにカジノを解禁し、観光客を誘致することを検討している。安倍首相も「成長戦略の目玉」としてカジノに期待を寄せる。その推進を目指す超党派の議員連盟は16日、関連法案の修正案をまとめた。しかし、慎重論は根強く、法案が今国会で成立するかどうかは不透明だ。カジノを巡る論争は激しさを増すだろう。

カジノ解禁の是非関する論争の多くは、以下のようにメリット・デメリットをめぐるもの。

  • メリットとして主に挙げられるのは、観光が振興され、雇用が生まれ、投資を呼び込むことができるというもの。カジノ税といった、新たな税財源を確保することもできる。
  • デメリットとしては、ギャンブル依存性が増えることや、犯罪の増加や青少年への悪影響がある。
  • こうしたデメリットを小さくするため、日本人には高い入場料を設ける案もある。
  • メリット・デメリットの比較を、もっと時間をかけて行うべき。

このカジノ論争のあり方自体に、一定の疑問がある。

大事な問題は、「政府」が税収や景気対策を目的として、明確にカジノを推進しようとしていることだ。その法制化手続きにも、環境整備にも税金が投入される。これは、単にカジノが規制緩和的に解禁され、自由市場の中で増えるのとは訳が違う。

そのため、考えるべきは、カジノ自体のメリット・デメリットではなく、政府が推進するにふさわしい「公益性」が、そこにあるかどうかだ。地域が活性化し、税収も増えることをもって、「カジノ振興には公益性がある」という意見もある。しかし、利益が適正なものでなければ、本当の意味で公益性があるとはいえない。

もしカジノを訪れた客が大金を失っても、皆が「スリルがあって、楽しい時間を過ごせた」と満足して帰っていくなら問題ない。そこから生まれる利益は、エンターテイメントを提供したことへの、適正な対価だからだ。しかし多くの人は、「安易な方法で儲けたい」という動機から、ついつい大金をはたいて後から後悔しているのではないか。自業自得ではあるが、不幸な人を確実に生んでいる。

利用者と提供者が本当の意味で、ウィン・ウィンの関係でなければ、本当に適正な経済活動とは言えない。

もちろんそれを言い出せば、日本の多くの産業が適正ではなくなるかもしれない。低俗な週刊誌や中毒性の高いゲームのように、刹那的な欲に訴えて客に買わせ、長期的に人生に害悪を与えるものは市場に溢れている。だが、そうしたものをすべて取り締まりの対象とするのは違う害悪を生むため、各自が自由に伴う責任を負う形になっている。

しかし、政府が積極的にカジノを推進するなら話は別だ。「カジノ解禁」は経済効果のみならず、「幸福な日本人を増やす」という政府の公益性の観点から、検討されなければならない。(光)

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