アメリカ独立の父、ワシントンの名はよく知られていますが、アメリカ独立を後押しした一冊のパンフレットについて知る人は少ないかもしれません。それが「コモン・センス」(「常識」の意)です。
これは、アメリカの哲学者トマス・ペインによって書かれたものですが、アメリカ独立を語る上で外せないものです。
本欄では、「コモン・センス」が果たしたアメリカ独立への貢献と、その秘密について探ります。
コモン・センスが民衆に与えた影響
アメリカ独立戦争の始まりとされる、「レキシントンの戦い」が起こった1775年当時、独立を積極的に支持するアメリカ人は少数でした。
イギリスへの忠誠を主張する「王党派」、独立を訴える「独立派」、そしてどちらも支持しない「中立派」で世論は3分していました。アメリカ国内も「独立一色」というムードではなかったのです。
この空気を変えたのが「コモン・センス」です。力強く独立論を唱えた同書は、1776年1月に刊行されたとたん、爆発的なベストセラーとなり、世論を独立戦争支持へ動かしたのです。