ドイツ銀行が、アメリカでの金融商品(住宅ローン担保証券)の不正販売のために米司法省に巨額の和解金(約1兆4300億円)を要求され、業績悪化への懸念からドイツ銀行の株価が急落したことが、このほど報じられた。

ドイツ銀行の経営難は以前から懸念されていた。その理由は、イスラム圏からの移民増加やドイツの主要輸出先である中国の経済悪化の影響などに加え、2014年6月から導入されたマイナス金利による銀行収益へのマイナス要因が挙げられる。

そこへ今回、巨額の和解金を要求されたことで、一気にドイツ銀行の経営に対する信用が落ち、それが株価の急落として現れた形だ。

銀行株価の急落は影響力が大きい

なぜ一企業であるドイツ銀行の株価がこんな大きなニュースになっているのだろうか(ちなみに、ドイツ銀行はドイツの「中央銀行」ではない)。

それは、影響力が非常に大きいからだ。

そもそも経済には、お金を貸し手から借り手へと循環させる金融機関の存在が不可欠だ。

主な金融機関である銀行に対し、投資家たちが株を買うという形で投資しているが、投資先の銀行の経営が悪化すると、その信用が落ち、株が売りに出されるため、株価は下落する。

ここで、もしドイツ銀行がこの和解金支払い命令による自己資本不足などを理由に、経営破綻に陥った場合、その金融不安が他の金融機関にも連鎖して広がり、その他の株価や債権価格にも大きな混乱が生じてしまう。

その意味で、銀行の株価は、経済を考える上で重要な指標ともなっている。

日本の銀行の株価も低迷している

このドイツ銀行株価の急落を受けて、その他の世界の主要銀行株価も下落基調となっており、日本の銀行も例外ではない。さらに、日本の銀行株価もマイナス金利以降、低迷を続けている現状もある。

日本経済を復活させる考え方について、大川隆法・幸福の科学総裁は、7月に行った大講演会「地球を救う光」のなかで、次のように述べている。

大切なのは、金融機関の株価が上がっていなければ、人々のところに資金は行き渡らず、事業資金は回らないということなんです。安倍政権下、平均株価は上がっていますが、残念ながら、金融機関の信用は取り戻していないんです。(中略)金融機関にもっと信用をつけなければ駄目なんです。(中略)ここを攻めなかったらいくら資金を供給しても、人々は消費に入りません

日本銀行は先般の金融政策決定会合で、長期金利をゼロ%程度に誘導する、と金融政策の方向転換を図っている。欧州のマイナス金利導入の例もそうだが、金融政策頼みの経済政策には限界があり、それが銀行株の低迷にも現れている。

現在の世界的な低成長、低金利が続いている状況では、どのように資金を供給するかということ以上に大事なのは、どのように人々の需要を呼び起こし、どのように仕事を創造し、資金需要を増やすか、そして、金融機関の信用を高めるかということだ。

今こそ、こうしたことを経済政策の柱に据える必要があるのではないか。(瑛)

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