「共産党の正当性を支える経済成長が停滞していることにより、政権の指導力が低下している。中国国内での人権弾圧の激化は、これを示唆するものである」と、24日付で米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じた。
同紙は、1989年に起きた天安門事件の際にも、経済状況が芳しくなかったことを挙げ、「経済状況の悪化」と「人権弾圧の強化」の関連性を指摘している。
2015年の経済状況と人権弾圧
中国経済と人権弾圧の関連性を考えるにあたり、現状を見てみたい。
中国国家統計局が1月19日に発表した、2015年の国内総生産(GDP)の成長率は、実質6.9%となった。前年の7.3%を下回って、25年ぶりの低水準だ。このデータでさえ、大幅に水増しがなされていると言われており、実際のGDPはこれより低いとする見方が多い。
人権弾圧の状況も悪化している。中国当局は2015年7月から一斉摘発を強化し、2カ月ほどで300人以上の弁護士、活動家が連行・拘束されている。弁護士が連行された理由として、「人権を守る活動そのものが国家転覆行為となりかねないからだ」と分析する声もある。
さらに、米国の議会と政府による「中国に関する議会・政府委員会」が、2015年10月9日、中国の人権弾圧の状況の年次報告を行っている。同報告は、中華人民共和国の歴史の中で習近平政権が最も過酷で容赦のない人権弾圧を実施していると断定した。
経済の高成長は、共産主義政権である中国政府の正当性を担保してきた。それが実現できない現状において、「当局への批判につながりかねない要因を排除しておきたい」という中国政府の思惑が伺える。
今後強まる人権弾圧
経済状況の悪化に伴い、人権弾圧が激しくなるという構図を考えると、今後、中国内ではより多くの人々が抑圧に苦しむことになるかもしれない。
国際通貨基金(IMF)の予想によれば、2020年には中国経済の実質経済成長が6%を割り込む。膨れ上がった企業債務や過剰な生産設備が成長の足かせとなり、景気の減速は止まらないと、同機関は分析している。同様の分析は枚挙にいとまがない。
今後もGDPが低下すれば、中国内における人権弾圧はさらに激しくなると予想される。これ以上の不当な人権弾圧を止めるべく、各国は、公然と弾圧を行う中国政府への批判を強め、中国へのけん制を強めるべきだ。(片)
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