首都トリビシの街の風景。
2016年10月号記事
Interview
年金をやめた国に学ぶ
自由主義が国を繁栄させる
旧ソ連の構成国だったジョージア(旧グルジア)は、独立後、自由主義路線を歩み、急速に経済発展を遂げた。
同国の元財務省高官のギア・ジャンディーリ氏に、自由主義の価値について聞いた。
(編集部 長華子)
経済学者
ギア・ジャンディーリ
プロフィール
1961年生まれ。ジョージアテクニカル大学、トリビシ国立大学卒業。中央選挙委員会、ジョージアの財務省の局長等を経て、2001年に、新経済学派(New Economic School)を設立し、現在同機関の副理事を務める。
――共産主義の問題はどこにあったと思いますか。
一言でいうと、人々の「やる気」を失わせたということです。 私有財産を否定する共産主義体制では、何かを生み出しても「自分のもの」にはならないので、努力が報われません。
さらに 私有財産の否定は、道徳の崩壊にもつながりました。 誰のものでもなければ、「盗んで何が問題なのだ」という発想が生まれ、盗みや賄賂の授受が横行しました。結果として、正直者がバカを見る世の中になってしまったのです。
資本家たちに私有財産を放棄させる過程では、さまざまな悲劇も生じています。旧ソ連では、農場主に「小麦などを国家に提供するように」という命令がなされましたが、農産物をつくるために多額の資本を投じてきた彼らは当然嫌がりました。そのため、旧ソ連の指導者レーニンは、農場主を始めとする資本家たちを粛清しました。彼らは、自由を奪う政府の政策を批判していたため、政府にとって都合の悪い存在だったのです。