宗教融和に希望が持てるニュースが、このほど、英BBCで紹介された。

パキスタンのカルサバード村では、イスラム教徒とキリスト教徒が協力して、洪水で流されたキリスト教会の再建にあたっているというのだ。

記事によると、彼らは異教徒間の連帯・融和を目指しており、お互いの宗教の行事に参加し合っている。「我々は、同じ神を信仰している」という現地の人の言葉が印象的だ。

連帯するきっかけとなったのは、2009年に同村の近くで起きた、一人のイスラム教徒による、キリスト教徒への襲撃事件だ。10人が殺され、数十軒の民家や4つの教会が放火された。この悲劇を癒すために、宗教を超えて共同体として連帯する運動が広まったという。

対立の中での宗教融和の取り組み

パキスタンは、イギリス領インドが独立する際、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立から、イスラム教徒地域として独立した歴史を持つ。近年では隣国アフガニスタンのイスラム主義勢力タリバンを支援してきた。

宗教間の対立が絶えないパキスタンだが、宗教融和への取り組みの例は他にもある。

キリスト教ニュースサイトの「クリスチャントゥデイ」は4月にも、パキスタン北部のラホールで起きた自爆テロの犠牲者に対して、様々な信仰を持つ200人がともに祈りを捧げたことを報じている。

そもそも、イスラム教徒とキリスト教徒との共存は、歴史上、珍しいことではない。例えば、イスラム国家であった「オスマン帝国」では、ミッレト制というものを採用し、ユダヤ教徒やキリスト教徒など異教の宗教共同体をつくり、納税を条件に信仰の自由と自治を認めていた。

イスラム教とキリスト教は「同じ神」を信仰している

中東の紛争や欧米でのテロなど、あれほど激しく争っているイスラム教とキリスト教が、「同じ神を信仰している」ということに、日本人は違和感を覚えるかもしれない。

しかし、イスラム教は、キリスト教の聖典である旧約聖書と新約聖書を啓典として認めており、モーセやイエス・キリストを預言者として認めている。

そして、霊的な真実を言えば、イスラム教の「アッラー」と、キリスト教の「天なる父」は、同じ存在である。

これらの背景を踏まえると、宗教対立を克服するヒントが見えてくる。大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『正義の法』の中で、以下のように述べている。

原理主義のように、もともとの教えを長く守り続けていると、社会が変わってきたときに合わなくなる部分が出てきて、ほかのものとぶつかるようになります。そして、あとから新しい宗教が起きると、そうしたものと矛盾してくることがあるのです。したがって、今、私たちは何とかして、その宗教対立を超えようと活動しています

霊的な真実を受け入れ、寛容の心を

キリスト教では、イエスが最後の預言者であり、イスラム教の開祖であるムハンマドを預言者として認めていない。

しかし、様々な時代、地域に、神の言葉を伝える者が生まれ、教えを説いてきたというのが霊的な真実だ。そのため、現代における教義の違いは、時代性、地域性の違いからきているものが多い。

宗教間の対立を止めるには、こうした宗教的事実を知ることが出発点となる。細かな対立は常に起きうるものだが、互いの違いを受け入れていく寛容の心を説くことが、今、求められる宗教の本道といえるのではないか。(藤)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『正義の法 憎しみを超えて、愛を取れ』 大川隆法著

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