あるゲームのキャラクターをめぐって、香港で抗議デモが起こった。英BBCなどがこのほど報じた。
そのキャラクターとはポケモンの「ピカチュウ」。アニメ版では主人公の相棒として活躍し、数あるポケモンの中でも絶大な人気を誇っている。
事の発端は、株式会社ポケモンの主要株主である任天堂が、ピカチュウの広東語名「Bei Ka Ciu」を中国語名「Pi Ka Qiu」に統合しようとしたこと。任天堂は以前、ポケモン最新作「ポケットモンスターサン・ムーン」の中で、100種類のポケモンの名前を中国語名に書きかえると発表していたという。
中華圏では、ポケモンはそれぞれ違う名で呼ばれている。
香港では、共通語として広東語が話されることから、香港の一部のポケモンファンたちは、「幼い頃の記憶が塗り替えられる」など、名称の統合に対して怒りを隠さない。6千人を超す人々が抗議デモを起こし、30日、決定の撤回を求める陳情書を日本領事館に提出した。
映画や民主化デモで香港の中国化に対抗
今回のデモをゲームという文化面だけから見てはいけない。香港を取り巻く現状を考えると、政治的な要素も伺える。
香港では、言論統制など、中国政府による圧力が強まり、2014年には雨傘革命など民主化を求めるデモが起きた。
こうした危機感は、香港のアカデミー賞とも言われる「香港電影金像奨」を受賞した映画「十年」に表れている。
この映画は、2025年までの間に、中国政府によって自由が奪われていく香港の様子を、オムニバスで描いている。その中では、本土で話される北京語が広東語に取って代わり、タクシードライバーが仕事を続けられなくなる、という未来も予想されている。この話は、今回のポケモンの名称をめぐるデモと通じる部分がある。
香港を中国化しようとする中国政府に対して、香港の人たちは映画や民主化デモなどで対抗し続けている。任天堂の今回の決定が、香港の民主化運動に水をさす形になってしまえば、あまりにも残念だ。
(冨野勝寛)
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