2016年6月号記事

香港の10年後は自由か?

映画「十年」で描かれる中国支配の足音

中国の影響力が強まり、次第に自由が失われていく香港の未来を描いた映画「十年」が、「香港のアカデミー賞」と呼ばれる香港電影金像奨で、最優秀作品賞を受賞した。本作の制作者に話を聞き、香港の今を知るため、記者は香港に飛んだ。

(編集部 長華子)

映画「十年」の受賞を報じる4月5日付「蘋果娯楽」新聞の一面。

2025年までの間に、香港の自由がどのように失われていくのかをオムニバスで描いた映画「十年」――。

昨年12月に香港で公開されると、広告を打たなかったにもかかわらず、同時期に公開された「スター・ウォーズ」を超える来場者を記録した映画館もあった。

しかし、中国メディアの環球時報は、「思想のウィルス」と酷評。ある香港の映画館では突然上映が終わった。その後も教会やコミュニティセンターでの草の根上映が続く中、香港電影金像奨を受賞。しかし、同賞の授賞式は、25年ぶりに中国で放映されないという異例の事態となった。

「十年」 中国の影響力が一層強まった未来が、5話の短編で描かれる。香港政庁前で焼身自殺をする女性を描いたもの、香港で使われている広東語が通じなくなっていく話、世論の後押しで国家安全法が成立して中国の警察権が及ぶようになる未来、禁書を扱う書店が人民服を着た子供たちの攻撃に遭うエピソード、ちょっとしたことで狂信的な中国共産党支持者に襲撃される一般市民の姿……。どれもフィクションだが、リアリティがあると評価されている。

香港が中国に支配される!?
~映画「十年」監督・プロデューサー独占インタビュー