伊勢志摩サミットでは、南シナ海問題に関する海洋安全保障が焦点の一つとなった。
G7の結束が強まる中、中国が巻き返しに努めている。
南シナ海領有権問題に関してフィリピンが中国を相手に起こしていた訴訟で、近くオランダ・ハーグの仲裁裁判所がフィリピンに配慮した判決を出す見込みが高まっている。中国女性報道官傅瑩(ふ・えい)氏は、米誌にアメリカの介入を非難する論考を発表したが、識者に内容を批判されている。
中国側の主張を代表する論考は米誌ナショナルインタレスト(5月9日、電子版)に発表された。第二次世界大戦やサンフランシスコ平和条約当時の中国の状況までさかのぼり、「中国は国際的に被害者であり続けた」と主張。もともと南シナ海は中国のものだとした上で、アメリカが裏でASEAN諸国を通じて南シナ海問題に介入してきたために、現在のような衝突が起きているとした。
これに対し、英国王立国際研究所のビル・ハイトン氏は16日付の同誌に反論を発表し、中国によるアメリカ批判の根拠は誤りであるなどと反論した上で、アメリカへの責任転嫁だと批判した。
中国は南シナ海問題の原因はアメリカにあると主張することで、国際社会からの批判を逃れようとしているようだ。南シナ海領有権問題に関する判決への焦りだけでなく、世界一の覇権国家となるという、中国の国家戦略目標達成への焦りを意味していると考えられる。
サミットでは、中国が鋼鉄を過剰に生産することで、海外に比べて極端な安価で鋼鉄を輸出し、世界の市場を圧迫しているという現状への対抗策についても話し合われた。中国はバブル崩壊の可能性もささやかれており、軍事的のみならず経済的にも国際的に警戒されつつある。
習近平氏が国家主席に再任されるとすれば、残りの任期期間は約7年だ。その間に中国の国家戦略を大方達成してしまいたいという思惑があるため、中国側に焦りが生じているという見方もできる。
中国はさまざまな問題を抱えているとしても、依然として日本にとって脅威であることに変わりはない。今後、日本は自主防衛を基礎としつつ、アメリカ、ロシア、ASEAN諸国と協力していくことで中国の侵略的野望を抑え、世界の平和に貢献していくことが求められている。(大)
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