今年度の就職活動の解禁日程が8月から6月に前倒しされ、学生、特に留学生の間で困惑が生まれている。8月が年度末の海外留学生は、就活に乗り遅れないよう留学を途中で切り上げて帰国したり、留年を覚悟したりしている。

就活日程前倒しの背景

就職活動の解禁日が8月に設定されたのは、留学生の就活が不利にならないようにすること、また学生が早い段階から就活に追われて勉学を疎かにしないようにするという趣旨だった。

だが、中小企業の採用時期が大手企業と重なり、中小企業の内定辞退が多発して人材確保が出来ないという事態が相次ぎ、企業が学生側に就活をやめるように圧力をかける「就活終われハラスメント(オワハラ)」などという言葉も生まれた。

こうした事情で、経団連は前倒し決定に踏み切ったが、結局、学生ではなく企業の都合が優先されてしまった形だ。とはいえ、留学を経験する優秀な学生が就活で不利になるのは、企業側としても学生側としても損失が大きいだろう。

ここで考えたいのは、そもそも就職活動のあり方だ。就職活動の解禁時期は、どの日程に設定しても問題が生まれるが、日本独特の横並びの就活自体に問題があるのではないか。

安定した就職か、流動的な転職か

海外の企業は即戦力となる人材を求める傾向が強い。一方、日本では新卒採用を重視し、その会社に合った人材を一からつくり上げるスタイルだ。これは、それぞれの個性よりも、周囲との同一性を重んじる日本文化の表れでもあるだろう。

また、日本では雇用の流動性が海外に比べて比較的低いと言われているが、年功序列や終身雇用制などの慣行によるものだろう。こうした制度の下では、労働者が解雇の心配なく働くことができるため、会社に対する忠誠心や結束力が高まるというメリットがある。

ただ、解雇が少ないということは逆に、転職や中途採用の機会も少なくなり、就職活動が一発勝負になりがちであるというデメリットにもつながる。

さらに、「解雇は悪である」というマスコミの印象操作によって、能力に限界が来ている人や、企業風土に合わない人も解雇することができなくなっている。このことも、雇用の流動性が高まらない原因の一つに挙げられる。

新卒での就職によってその後の人生がほぼ決まってしまうため、学生は必死になって就職活動に励む。しかし、雇用の流動性が高まれば、実力の高まりに応じて転職によってステップアップしていくこともでき、人生の選択肢が広がる。

個人のチャンスの平等を確保することは、企業の活発化や日本の経済発展にもつながるだろう。(志)

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