表現の自由に関する日本の状況を調査した、国連特別報告者のデービッド・ケイ氏が、このほど約一週間の日本滞在を終えた。

ケイ氏は、放送法などのメディア規制や、日本の歴史教科書から慰安婦問題についての記述が削除されつつあることに懸念を示すなど、日本の「表現の自由」をめぐる問題について記者会見を行った。上記のポイントについては本欄でも取り上げた。(関連記事参照)

ケイ氏は他にも、メディア横断組織を設立することで政府からの独立性を強化すること、構造的に政府機関との癒着を招く日本の「記者クラブ制度」は廃止すべきだと主張している。

日本では表現の自由が脅かされているかのような記者会見の内容には疑問もある。国連は日本の現状を調査している時間があれば、中国の人権侵害や報道の自由について、もっと問題視するべきだろう。

ただ、この「記者クラブ制度廃止」の提言には汲むべきところもある。

記者クラブとは、主に官公庁や国会、首相官邸等から継続的に情報を取るため、大手の新聞社、通信社、テレビ局等を中心に構成される任意団体である。公益社団法人である「日本記者クラブ」とは性質を異にし、フリージャーナリストやネットメディアなどの新興勢力はたいてい入ることができない。

記者クラブでは官公庁などから直接資料を受け取る。信頼できる情報源から安定して情報を得ることができるため、大手メディアが政府の動きを漏らさず伝える上で重要な役割を果たしている面もあるだろう。ただ、官公庁と記者と持ちつ持たれつの関係になりやすく、政府によるマスコミ統制に使われる可能性も指摘されている。一例を挙げると、消費増税が景気悪化を招くことは明らかなのに、8%に増税される前は、新聞各紙は消費税に賛成する論調の記事がほとんどだった。

さらに、記者クラブが既存の大手メディアで占められ、閉鎖的であることによって、「どんな情報を、どのような論調で伝えるか。もしくは伝えないか」の判断が及ぼす影響が多大なものとなる。

実際、この「記者クラブ制度廃止」についての内容も、主要各紙やテレビではほとんど触れていないようだ。

「伝えない」というマスコミの判断は大きな影響力を持っており、その情報や出来事がなかったことにされてしまう。

幸福の科学グループの大川隆法総裁は、『正義の法』の中で「 民主主義社会とマスメディアの関係におけるいちばんの問題点は、マスコミの持っている『黙殺権』だと思うのです 」と指摘している。国民の判断の材料となるべき情報が正しく伝わらないことは、民主主義制度において重大な問題だ。

マスコミは、権力を乱用することなく、責任の大きさを自覚して国民に奉仕する必要がある。(大)

【関連記事】

2016年4月25日付本欄 国連報告者 慰安婦の教科書記述削除を批判 歴史の見直しは首相から

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2016年4月20日付本欄 国連報告者、放送法・特定秘密保護法に懸念 調査の透明性に問題

http://the-liberty.com/article.php?item_id=11211

2016年2月号記事 マスコミはいつから国家機関になったのか? - 増税を進める財務省と"マスコミ省" - The Liberty Opinion 2

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