「その日は、雲が低く垂れこめた、どんよりとした日だった。部屋の中は、いつものように最適な温度と湿度。洋子さんは、だらしない格好でカウチに座り、くだらないゲームで時間を潰している。でも、私には話しかけてこない」
これは、とある文学賞の応募作品の始まり。一見普通の小説の書き出しのようだが、他とは違う部分が1点ある。ロボットが"執筆"している点だ。
人工知能(AI)を使って創作された小説が、国内文学賞の1次審査を通過した。AIによる小説創作の研究を行っている、公立はこだて未来大、名古屋大、東京工業大などのグループが21日、都内で報告会を開き発表した。
1450作品中11作品がAIとの"共著"
同グループが応募したのは、「星新一賞」の一般部門。この賞には、「人間以外」にも応募できるという特徴がある。一般部門への応募作品約1450作品中、AIが関わった作品は11あったというから驚きだ。
研究グループは昨年秋、4作品を応募し、そのうち1作品以上が1次審査を通過したという。なお、審査の過程では、人工知能を使ったことは明らかにされていない。
ただ、小説すべてをAIが創作したわけではない。
物語の構成や登場人物の性別など、細かい場面設定は人間が行っている。AIはそれに合わせて、人間が用意した単語や単文を選びながら、創作したという。8割方人間の手が加えられているというのだから、AIが小説家として"独り立ち"するのはまだまだ早いようだ。
研究グループの代表を務める、公立はこだて未来大の松原仁教授は、「これまでの人工知能は、囲碁や将棋など答えがある問題を解くことが多かった。今後は、人間の創造性にも対象を広げたい」と今後の研究への思いを語っている(22日付読売新聞)。
AIに仕事を奪われても困らないためには
自動車の自動運転、医療の効果的な治療法の提案など、AIは幅広い分野で応用可能な技術で、近年急速な発展を見せている。AIを搭載した囲碁ソフト「アルファ碁」はこのほど、世界のトップ棋士と5番勝負を行い、4勝1敗で勝ち越し、世界に衝撃を与えたばかりだ。
そうした中、AIによって人間の仕事が奪われる危険性も指摘されている。
オックスフォード大学のマイケル・オズボーン博士は、アメリカ国内で今後10~20年で約半分の仕事が、AIやロボットに取って代わられる可能性が高いと警鐘を鳴らしている。機械でパターン化できる単純労働は、今後人間のする仕事ではなくなるようだ。
AI社会を迎える前に、人間が作り出す仕事の付加価値について改めて考える必要がありそうだ。
大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『資本主義の未来』の中で、今後の未来社会を切り拓いていく力について、こう語っている。
「 工業生産の時代には、正確に計算ができたり、きっちりとした仕事ができるような人をつくることが大事でしたが、これから先は、『今まで見たことがないようなものを考え出す人』や『前例がないものをつくり出すことができる人』をつくり出していく教育をやらないと駄目なのです 」
こうした創造性は、「感動を与える」ことと深く関係している。
例えばホテルの接客で考えると、部屋への案内や食事のサービスなどマニュアル化できるサービスはAIに取って代わられるかもしれないが、人間の心の機微を読みとり、愛や思いやりがこもった感動につながるサービスは、人間だからこそ生み出せる付加価値の一つだろう。
人間がAIと共生できる未来を切り拓いていくためのカギは、創造性にあるのかもしれない。
(冨野勝寛)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『資本主義の未来』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1353
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