衆議院の選挙制度を見直す動きが進んでいます。

有識者の調査会がこのほど、「アダムズ方式」と呼ばれる方法に基づいて、「小選挙区6議席、比例区4議席を削減すべき」という答申を出しました。これについて、大島理森・衆院議長は22日、各党から意見を聞きました。意見は割れていますが、この方式について、見ていきましょう。

選挙のたびに1票の格差の問題が浮上

まず、押さえておきたいのは、「1票の格差」の問題です。現在、都道府県によって1票の価値がバラバラで、1人1票の民主主義の原則が崩れかねないという問題です。

現在の議席の配分は、人口の多い少ないにかかわらず、まず各都道府県に1議席を配分します(1人別枠方式)。その上で、地域の人口に比例した議席を割り振っています。

総務省が発表した有権者数に関するデータ(2015年9月2日時点)によると、衆議院の小選挙区について、最多は東京1区の約50万人、最少は宮城5区の約23万人です。東京1区で投じた票には、宮城5区の票の半分未満の価値しかない、ということになります。

つまり、人口の少ない地域ほど、1票の価値が「重く」なるのです。

これは、憲法14条にある「すべての国民は、法の下に平等」にも反していると問題視されています。実際、2014年、15年の衆院選など、近年行われた選挙の多くで、最高裁は「違憲状態」と判断しています。

人口比をより反映しやすいアダムズ方式

そうした中で、1票の格差問題の解決策として、提案されているのがアダムズ方式です。

アダムズ方式は、各都道府県の人口に応じて、議席を配分する方法です。現行制度と大きく違う点は、あらかじめ割り振っていた1議席を、配分しないこと。その点、人口比をより反映しやすいという特徴があります。

調査会は、小選挙区にこの方式を導入すれば、東北や九州、沖縄などの13県では、議席が減り、人口が多い関東では議席が増え、小選挙区の定数は「7増13減」を答申しています(2010年実施の国勢調査で計算)。1票の最大格差も1.788倍から1.621倍に改善される見通しです。

民主党などの野党は、調査会の答申に賛意を示しています。

一方で、与党は別の方法を用いて、議員一人当たりの人口が少ない県の定数を減らし、「0増6減」を提案しています。削減対象の地域に地盤を持つ自民党議員らは、アダムズ方式を導入されると困るようです。

いずれにせよ、どちらの案が実現しても、小選挙区の議席数は289に減少します。比例区と合わせると、衆議院全体で10議席減り、議席数は戦後最小(米国占領下の沖縄の定数2を除く)の465になります。

小選挙区制自体の見直しも必要

1票の格差の議論は進められるべきでしょう。ただ、小選挙区制自体を見直すことも必要です。

小選挙区制では、その選挙区から一人しか当選しないので、「死票」が多くなります。2014年の衆院選では、総得票のうち48%が死票になりました。既存の政党に有利になり、新しい政党、新しい人材の政界への新規参入を阻んでいます。

本欄でも何度か紹介してきましたが、中選挙区制であれば、死票や1票の格差は減り、有権者の声がよりリアルに反映されます。1票の格差の是正をきっかけに、小選挙区制の見直しも考える必要があるでしょう。

(冨野勝寛)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『憲法改正への異次元発想』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=953

幸福の科学出版 『正義の法』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1591

【関連記事】

2013年3月7日付本欄 「一票の格差」違憲判決 中選挙区制への抜本改革を

http://the-liberty.com/article.php?item_id=5708

2012年10月18日付本欄 最高裁が参院選「違憲状態」 地方偏重が日本の発展を阻害している

http://the-liberty.com/article.php?item_id=5019

2012年4月27日付本欄 「一票の格差」是正 樽床私案で幸福実現党1議席獲得

http://the-liberty.com/article.php?item_id=4210