「1票の格差」が最大で5倍あった2010年7月の参院選について、最高裁は17日、「違憲状態」とする判決を言い渡した。ストレートな「違憲」ではないため、今回の判決で国会議員が失職するわけではないが、この「違憲状態」が、日本の発展を著しく阻害していることを知るべきだろう。

2010年参院選の1票の格差は、都道府県単位で見ると、有権者数の最も少ない鳥取県を1.00としたとき、神奈川県が最大で5.00。逆に表現すれば、鳥取の有権者が「1票」なのに対し、神奈川の有権者は「0.20票」の重みしか持たないことになる。ちなみに、三大都市は、東京が「0.23票」、大阪が「0.21票」、愛知が「0.25票」だ。

全国的に見ると、1票の重みがあるのは、鳥取を筆頭に、島根、高知、福井、徳島などであり、1票が軽いのは、神奈川、大阪、北海道、兵庫、東京、福岡、愛知などである。結局、人口が多い都市部の1票が軽くなっている。

この状況は、日本社会に旧い体質が温存されやすく、イノベーションが起こりにくい状態にあることを示している。

農林業や漁業などを中心とした地方は、過疎化の問題などをカバーするために、様々な補助金によって支えられている。これらをすべて否定するものではないが、世界第三位の日本経済をけん引しているのは、やはり都市部である。資本主義の原点に帰っても、富を集積できる地域が、より多くの富を生み出すことができると言える。

このまま、地方の「1票」が格段に重い状況が続けば、日本の政治や経済が地方中心となって、平等性や富の分配を求める声が強くなり、発展性や競争力などは後回しになる。だが、それでは日本という国自体が、生き馬の目を抜く国際社会で生き残ることは難しくなるだろう。

最高裁は昨年3月にも、格差が最大で2.3倍あった09年の衆院選について、「違憲状態」としており、今回、史上初めて、衆参両院ともに「違憲状態」となった。

地方をいかに発展させていくかという議論も別途必要だが、「1票の格差」が、世界における日本の政治や経済の地位を貶めないよう、早急な制度改革が必要だ。(格)

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2011年1月18日本欄 最高裁が日本を「停滞」させている

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