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政府は26日、閣僚や経済界トップによる「官民対話」を開いた。会合では、経団連の榊原定征会長が「2016年春闘で前年を上回る賃上げを呼びかける」「設備投資を今後3年間で10兆円増やすことが可能である」との考えを表明した。
安倍首相は、2020年頃に国内総生産(GDP)600兆円を達成することを掲げ、経済界に賃金上げと設備投資の増加を要求していた。今回の表明は、その要求への回答となる。
「内部留保に課税」の圧力?
これは安倍政権の「国家社会主義」的なやり方に、民間が屈した図と言える。
そもそも賃上げや設備投資の増強の決定や実施は、個々の企業の経営判断だ。当初、榊原会長も数値目標の提示に否定的であった。それに対し、自民党内から企業の内部留保に課税する案が浮上するなど、圧力もかかった。
ここまで政府が経済界に圧力をかける背景として、2015年4~6月期ならびに7~9月期の国内総生産が2期連続のマイナスとなり、景気停滞に陥っていることへの強い焦りが伺える。さらなる増税も控える中、少しでも景気を上向かせなければ、政権の命が短くなる。
民間消費が景気回復の肝
しかし、企業が投資を渋っているのも、中国経済の減速や日本経済の先行きの不透明さにある。
日本の経済の6割を支えているのは国民の消費だ。そんな中、2014年4月の消費税増税により、たった1年で約10兆円の消費が失われた(実質GDPベース)。予定通り、2017年4月に消費税が10%に増税されれば、さらに消費が冷え込み、国内総生産600兆円どころか、国内市場が縮小する。
安倍政権は投資や賃上げを強引に迫るよりも、民間の消費を刺激させる経済環境の整備に目を向けるべきだ。(HS政経塾 油井哲史)
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