札幌の私立中学で、いじめ被害を受けた男子生徒が退学していたことが分かった。男子生徒は通信アプリLINEで「こ・ろ・す・ぞ しね」といったメッセージを送られたほか、他の生徒に叩かれるなどいじめを受け、9月中旬から不登校になっていた。

学校は男子生徒の保護者から申し出を受けていじめ対策委員会を設置し、生徒や担任への聞き取りを行い、いじめを確認した。いじめたとみられる生徒を1週間の自宅謹慎とし、他の生徒に対しても注意を行った。同校は、生徒の生命や進退に重大な被害が生じるいじめがあったとして、「重大事態」として道に報告。札幌法務局も母親からの相談を受けて調査を行っている。

いじめた生徒を出席停止にするなどの対策が実現しているのは、2013年10月から施行されたいじめ防止対策推進法の規定によるものだ。「いじめは犯罪であり、許されない」という認識が、学校の対応に反映されるようになった。

ただ、いじめ防止対策推進法が制定された大きなきっかけになったのが、大津市のいじめ自殺事件だった。全国でいじめによる自殺は相次いでおり、自殺を防ぐための学校の対応も十分でないことが伺える。

名古屋市で今月1日、中学一年の男子生徒がいじめを苦に自殺した事件も、いじめの発見が遅れた。調査の結果、担任はこの生徒に対して「いじめられやすい」という印象を持っていたことが分かっている。また、同市では子供の人間関係などを調べる心理テストを実施している。10月のテストで、この生徒には「支援が必要」という結果が出ていたにも関わらず、対策会議は5日に行う予定にしていたという。

名古屋市では、2013年にいじめを苦に生徒が自殺したことから、様々な対策を取ってきた。スクールカウンセラーなどからなる専門チームを作り、気になる生徒に聞き取りを行うなど、いじめの早期発見ができる体制を整えてきた。同市の河村たかし市長は、「校内で話し合いをしてから相談しようとしていたが、間違っている」「もっと早く、いじめや不登校を専門とするチームに相談してほしかった」と話す。

事件後に生徒に行ったアンケートでは、延べ80人が生徒へのいじめを見聞きしたと回答している。学校側が問題の重大性を認識していれば、最悪の事態が起きる前に発見できた可能性が高い。

やはり、今のいじめ対策の問題は、学校がいじめを発見しないこと、あるいは隠蔽してしまうことにある。大阪市教育委員会は今年8月に決定したいじめ基本方針で、情報を隠ぺいした教師に懲戒処分を含む厳罰を定めた。これは一つのモデルであり、今後、「いじめ防止対策推進法」でも同様の改正が必要だろう。

悲劇的ないじめ自殺をこれ以上繰り返さないためにも、学校現場の意識改革がまだまだ必要なようだ。(河本晴恵)

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