幸福実現党総務会長兼出版局長

矢内筆勝

プロフィール

(やない・ひっしょう)朝日新聞を退社後、幸福の科学に入局。主に広報部門を担当した後、月刊「ザ・リバティ」編集部を経て、広報局長、常務理事等を歴任。NPO(非営利組織)「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」会長に就任し、いじめ相談の傍らいじめ問題解決に向けて、全国でシンポジウムを開催。主な著書に、「いじめは犯罪!絶対に許さない」(お茶の水学術事業会)がある。その他、「朝日新聞の偏向報道から子供の未来を守る!会」「中国の脅威から子供の未来を守る会」を設立、会長。 公式サイト http://yanai-hissho.hr-party.jp/

中国の習近平国家主席が天安門広場で、「中国人民抗日戦争勝利及び反ファシズム戦争勝利70周年」の軍事パレードを9月3日、行いました。

中国の軍事パレードはこれまで、中国共産党が現在の中国を建国した10月1日(国慶節)を記念して行うのが通例でした。しかし今回、習近平はその前例を破り、あえて「抗日戦争勝利記念日」に合わせて、パレードを挙行しました。その狙いは何なのでしょうか? その背景で、一体何が起きているのでしょうか?

今回、幸福実現党・国防部会の会長である私・矢内とメンバーの横井基至さんの二人は、9月2日から8日の日程で、パレードが行われた北京市内と南京の「南京大虐殺記念館」、株暴落で揺れる上海を視察してきました。

「戦後70年」――。現地で私たちが見た、習近平率いる中国共産党による「反日」の実情と、「中国の今」の一端を、全5回に分けて報告します。1回目の今回は、パレード前日の異様なほど「反日一色」に染まった中国の様子について。

「北京の空は青かった! 」

私たちが成田から北京に向かったのが、9月2日、軍事パレードの前日です。飛行機で約3時間。天津市の上空を経て、北京上空へ――。

空から見る中国大陸は、興味深いものでした。天津の工業地帯の港湾からは、真っ黒に染まった川の水が、まるで海龍のように海洋に流れていくさまがハッキリと見えます。また、そこから内陸に至る過程で、緑の農村地帯(村落)と、巨大な高層ビルの集合住宅が立ち並ぶ大都市が幾度も交互に現れ、中国における地方の急激な都市化と猛烈な開発ぶりが伺えます。

中国では今、不動産バブルの崩壊によって高層マンションやアパートの多くが空き家になり、ゴーストタウン(鬼城)と化しています。上空からは判別できませんが、中国で都市の造成ラッシュがいかに大規模に進んでいたかが、見てとれます。

北京空港に着いて驚いたのが、「空の青さ」です。すでに報道されているように、この青空は"自然"ではなく、"人工"の空です。中国政府は約2週間前から大気汚染対策として、北京市だけで約2000社、周辺の省も含めると1万社以上の工場の操業を停止させたと言われています。

「閑散」とした北京市内

空港には、「日本人だけで市内を移動するのは危険。何が起きるか分からないから」と、通訳の魯さん(仮名)が迎えに来てくれました。「北京は異様な厳戒態勢が敷かれています。こんなに政府がピリピリしているのは初めてです。北京で暮らす日本人は皆、自宅に籠っているか、市内から逃げ出していますよ」

タクシーで市内のホテルに向かう途中、「公安」と書かれたパトカーが検問所を作って警戒する一方で、道路が「閑散」としています。

市内を走行する自動車は2週間ほど前からナンバーによって規制(奇数の日は奇数のナンバー、偶数の日は偶数のナンバーのみ走行可能)され、市当局から「むやみに外出しないように」との通達が出ているとのこと。さらに3日から5日まで、中国全体が「臨時祝日」となったため、「裕福な市民の多くが、地方や海外に旅行で出かけてしまった」と魯さん。

「抗日一色」に染まった中国

北京市内のビルや高架橋には、「隆重記念中国人民抗日戦争〓(既の下に旦)世界反法西斯戦争勝利70周年(謹んで記念します。中国人民の抗日戦争及び世界反ファシスト戦争勝利70周年)」と書かれた巨大な横断幕や看板が、掲げられています。

ホテルの部屋のテレビも、「抗日一色」です。中国には国営のCCTVや民放など約20チャンネルありますが、大部分のチャンネルで「抗日軍事パレード」のニュースか特番、「抗日戦争」のドラマを放送しているのです。

試しにチャンネルを回すと、軍事パレードのニュース、パレードの兵器紹介、パレードで行進する兵士の練習風景、日本軍と戦ったという人民解放軍の老兵のインタビュー、抗日戦争のドラマ、日本軍が行ったとされる残虐行為の映像(生き埋めの写真、死体の写真、首切りの写真)、日本の右傾化を解説するニュース番組等――これらが繰り映し出されます。

中国政府はパレードに合わせて、9月1日から5日まで、歌やバラエティなどの娯楽番組を一切禁止し、「抗日戦争」に関する番組だけを放送するよう各テレビ局に通達を出していたのです。もちろん、新聞・ラジオも同様です。

パレード前日の中国は、メディアを通した徹底した国家統制によって、文字通りの「反日一色」に染められていたのです。

(第2回へ続く)

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