2015年10月号記事

えっ?
入学5カ月で、もうこんな実験してるの?

「新産業を生む力」に特化する理系

ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)未来産業学部

理系は理系でも、「新産業を生む力」に特化した理系学部がある。今春、千葉県長生村に開学した高等宗教研究機関、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の「未来産業学部」だ。その新しい教育モデルに迫る。

(編集部 馬場光太郎)

プラズマ発生装置

Plasma Generator

光っているのは、固体、液体、気体に続く物質の「第四の状態」であるプラズマ。自前の装置で発生させたプラズマを植物の種子に当て、発芽・育成を促進する。実習チームの下戸聡さんは様々な授業から、4年後の起業の“種"を探し、育てているという。

「最初にプラズマが出た時の感動といったら……」

植物工場

Plant Factory

砂漠や宇宙空間でも野菜が育てられ、食糧問題解決のヒントとして注目される植物工場。日照時間や光源などの条件を変え、収穫量や成分がどう変わるかを計測する。“製造"した野菜を食べるとき、理系として創造の喜びを噛みしめる。

「お父さん、田舎にレタス送ります」

ヒューマン・インターフェイス

Human Interface

空中で手を動かすことで、コンピューターを操作できる。学生たちはプログラミングと最先端センサーを組み合わせ「モグラ叩きゲーム」を作成した。SF映画で見るような、空中に投影された画面をタッチして操作するモニターは、この技術から生まれつつある。

「次のレポート、これで書こうかな」

私は一日たりとも、いわゆる労働をしたことがない。

何をやっても楽しくてたまらないからだ。

ートーマス・エジソンー

単なる理系人材ではなく「産業そのものを生む人材」を育てるカリキュラム

上の写真は、HSUの「未来産業学部」に通う1年生の、実習における実験の様子だ。たった入学5カ月で、これだけ本格的な内容に取り組む大学は少ない。

学年を追うごとに実習内容も高度になる。4年後には製品開発をして企業に売り込んだり、小型人工衛星を打ち上げるといった計画もある。

実習に期待する3つの効果

こうした実習にはどのような効果が期待できるのか。

第一に、早くから先端技術に触れることで、好奇心が刺激される。その技術を深く理解したくなり、座学での知識吸収もスムーズになる。

第二に「技術の異種結合」が期待できる。学生たちは、複数の実習テーマをかけもちできる。異なる技術を知ることで、それらを融合させ、新しい発見・発明へのきっかけになる。

第三に、研究開発の経験が十分に積める。企業の6割以上が、技術者養成という点で現状の理工系教育に不満があるという。主な理由は「問題や新しい仕事を自ら見つけ出し、解決する能力の育成が不十分」「実験・実習の経験が少ない」というもの(注1)。同学部の教育は、そうした産業界のニーズに応えうるものだ。

次ページからのポイント

学部長への1問1答 / 未来産業学部ディーン 福井幸男

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