タイの首都バンコク中心部で17日夜、爆発が起こり、少なくとも22人が死亡し、120人以上が負傷した。タイ国家警察は19日、監視カメラに爆弾を仕掛ける様子が映っていた、欧州もしくは中東系の風貌の男に逮捕状を出した。共犯者も2人いると見ている。

爆発が起きた場所は、ヒンドゥー教のブラフマー神が祀られているエラワン廟(びょう)付近。外国人観光客も数多く訪れることから、タイの国内総生産(GDP)の1割を生み出している。そのため、観光産業に打撃を与えることを狙った犯行ではないかと見られている。

当局には、タイ軍事政権への反体制派による犯行との見方がある。また、容疑者が中東系の可能性があることから、今年7月に政権がタイへの亡命を希望していたイスラム系少数民族のウイグル族109人を中国に強制送還したことへの報復ではないか、との見方も出ている。

タイは民主主義への過渡期にある

タイの歴史を振り返ってみると、元々は国王が政治の決定権を持つ絶対王政の国だった。だが1932年の立憲革命を経て、選挙で国会議員を選出し、国会で首相を選出する議院内閣制に移行した。

2001年には、事業家として成功したタクシン氏が首相に就任。特に農民に向けたさまざまな施策により、地方や農村部の有権者の支持を受け、選挙基盤を構築した。

しかし、「タクシン氏の政治はバラマキ政治だ」として、「王室の宗教的権威を守る」ことを重視する軍部らがクーデターを起こし、タクシン氏は亡命状態に。その後、11年には国民の支持を得た、妹のインラック氏が首相に就任した。

そして14年5月、軍部は再びクーデターを起こし、インラック政権を打倒。1932年以来、19回目のクーデターだった。その後も経済の低迷や干ばつなどの問題を抱え、混乱が続いている。

タイは解決するべき宗教問題を抱えている

今回の爆発事件を受け、タイで政治的な緊張が再熱することは避けられないだろう。タイは戒律の厳しい小乗仏教国であるが、南部の3県の人口約200万人のうち75~80%がイスラム教徒という“難しい”国だ。2004年から分離独立を目指したイスラム武装勢力とタイ政府の間で大規模な衝突が相次ぎ、これまでの死者は6000人以上に上っている。

現段階では今回の爆破事件の目的は分からないが、軍事政権への不満や、タイの小乗仏教による縛り、イスラム教徒との対立などの宗教問題が関係しているのかもしれない。

複雑な問題を抱えるタイだが、本来、民主主義と宗教は両立する。真の民主主義は、ただの多数決ではなく、神や仏の理想を実現するためのもの。また民主主義は、一人ひとりの持つ才能やエネルギーを最大限に開花させる繁栄主義とも言え、民主主義国家では経済も発展する。

タイは民主主義国家への過渡期にある。タイが民主主義国になるためには、タイ仏教の戒律を見直したり、イスラム教など他宗教への寛容な姿勢も必要だろう。日本は、真の民主主義の姿をタイに示すことで導いていくことが大切だ。(泉)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『守護霊インタビュー タイ・インラック首相から日本へのメッセージ』大川隆法著

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