「スマホやめますか、それとも信大生やめますか」――。

信州大学の入学式で、山沢清人学長が行ったあいさつが話題になっている。

この発言の裏には、スマートフォンやテレビなどに依存し、大量の時間を奪われ、創造性を養っていけないという大学生を取り巻く現状がある。山沢学長は、創造性を育む上で、時間的、心理的な余裕を生み出すことが重要であり、読書などを通じて自分で考える習慣を身につけてほしい、と新入生への期待を語った。

毎日2時間半スマホをいじる大学生

山沢学長の発言は的を射ていると言える。

昨年10~11月に、全国大学生活協同組合連合会が行った学生生活実態調査によると、スマホの1日平均利用時間は平均163.6分にも達する。その一方で、読書を全くしない学生は4割にも上る。

今やパソコンやスマホなどの電子機器を使って、誰でも簡単に情報を取得できるようになるなど、情報技術の発達が社会にもたらした恩恵は大きい。しかし一方で、価値の低い情報が蔓延するなど、その弊害も見逃すことはできない。

情報そのものには価値がない

ここで考えるべきは、情報そのものには価値があるわけではないということだ。情報は仕事や生活で使えるように整理されることで、「知識」となり、初めて価値が出てくる。つまり、情報の洪水の中から、いかに価値を生み出す情報を選ぶかが重要であるのだ。

「知識」と「智慧」の違いを認識していた松下幸之助

さらに、その知識が経験に裏打ちされて、人生観を高めたり、人に大きな気付きを与えるレベルのものになると、それは宗教的にいう「智慧」に昇華する。

パナソニック創業者の松下幸之助氏は「知識」と「智慧(知恵)」の違いについて、知識は道具であるが、智慧は正しさを判断することであり、知識という道具を使う人そのものであると語っている。松下氏はその違いを理解するだけでなく、智慧を体得していたからこそ、経営上難しい局面でも正しい判断を下し続けることができたのだ。

経営学の祖であるドラッカーは、成果を上げるには時間の管理からスタートするべきと述べている。時間は人間に平等に与えられた資産だ。情報技術を、人間や組織の時間をつくるためではなく、時間を奪う方向に使ってしまえば、創造性を発揮できず、付加価値は何も生まれない。知識社会を生き抜くために、今一度、自分の時間の使い方を見直してみてはいかがだろうか。(冨)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『智慧の法』 大川隆法著

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