厚生労働省は8日、2012年度の国民医療費が6年連続で過去最高を更新し、前年度の38兆5850億円から1.6%増え、39兆2117億円になったと発表した。国民一人当たりの国民医療費は前年度と比べて5600円増え、30万7500円となっている。

一方、財政制度等審議会は同日、財政制度分科会を開き、75歳以上の後期高齢者医療と介護の給付費が毎年3.1%ずつ増えると見積った。これは政府が想定する経済成長率とほぼ同水準で、現役世代の負担のみでは社会保障費を賄えず、社会保障制度の維持が困難になる可能性があるという指摘だ。(9日付SankeiBiz)

団塊の世代が70代にさしかかり、今後、ますます高齢者人口が増える状況下で、国民の一部から医療保険をはじめとした社会保障の充実を求める声が上がっている。しかしその前に考えなければいけないのは、医療制度そのものの問題点である。

まず、医療制度が抱える問題として、患者の症状に合わせた医療が行われていないという点が上げられる。軽い病気でも大病院で診てもらえるので、安易な受診につながりやすく、その結果、無駄な検査や投薬が増えている。

また、薬価や医師の診療報酬が国によって決められており、医療業界内では十分な市場原理が働かない。価格競争や技術革新が起こりにくく、医療サービスの向上につながりにくいのが現状だ。生活習慣病の人は症状を抑えるために、薬を飲み続ける状態が続くなど、患者を治し、病院から“卒業"させる医療に向かわないわけである。

全国公私病院連盟と日本病院会の「平成25年病院運営実態分析調査の概要」によると、昨年6月に行われた1カ月分の病院運営の調査に関して、回答のあった病院のうち約7割が赤字であることが分かった。医療制度のみならず経営マインドを持った病院が少ないことを裏付けている。

大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『未来への国家戦略』(幸福の科学出版刊)の中で、学校や病院などの公益性の高い事業体に関して、次のように述べている。「公益性が高い事業体であっても、『黒字体質をつくっていくことは、善である』という考え方を持たなければいけません。公益性の高いところが『黒字体質をつくる』ということは、『そのサービスをさらに広げることができる』ということを意味するのです」。

「病院が儲ける」と聞くと感情的に反発する人もいるかもしれないが、やはり、経営マインドを持った病院と医療制度の改革が必要だ。患者の医療費の負担を減らすことは少子高齢化問題に対する抜本的な解決策とはならない。(冨)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『未来への国家戦略』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=70

幸福の科学出版 『幸福実現党』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=113

【関連記事】

2014年9月号記事 患者を"卒業"させる病院を目指せ - 医療の「常識」逆転 後編

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8166

2014年10月4日付本欄 医師でなくても病院トップに 岩盤規制を外し医療費削減を

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8523