少子高齢化・人口減少に直面している日本の現状を打破することができるだろうか。

政府の経済財政諮問会議が開かれ、「50年後に1億人程度の安定した人口構造の保持を目指す」ことなどを柱とした「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」の骨子が決まった。

国立社会保障・人口問題研究所の予測では、今から36年後の2050年には、日本の人口は約1億人あまりにまで減少するとされている。このままでは、確実に人口1億人を下回ってしまう。

人口減少対策の大きな柱として、第一に「出生率」向上がある。日本の合計特殊出生率は人口維持に必要な2.08を大きく割り込む1.41(2012年)。そんな日本の中で、少子化を食い止め、出生率1.86(直近5年の平均)という高い実績を出した「奇跡の村」と呼ばれる村がある。長野県下條村だ。

下條村では、1992年に就任した伊藤喜平村長によって大胆な少子化対策が進められた。なかでも目玉となった施策が、村営の「若者定住促進住宅」だ。この住宅は、「子供がいる」「結婚の予定がある」などの条件を満たせば、2LDK(20坪)に家賃3万3000円で入居できる。これは現地相場の半額程度。さらに高校卒業までの医療費無料化、村営保育所の保育料引き下げ、義務教育の給食費40%補助などを実施。結果、年少人口(0~14歳)の比率は県内トップの16.8%となった(2010年)。

このように出生率アップには、待機児童対策のみならず、居住環境支援、養育支援、若者の就労・育児支援など、幅広い施策が必要となる。

人口減少対策のもう一つの柱として、「外国人労働者」の受け入れ拡大がある。

安倍首相は今年4月に、経済成長維持などのため外国人労働者の受け入れ拡大を指示。今年末までに「海外子会社などの製造現場で働く外国人の受け入れ」「国家戦略特区で家事支援人材の受け入れ」「特定の国家資格を取得した外国人留学生に就労を認める制度」などを具体化する方針だ。製造業などに限られている技能実習制度についても、対象職種の拡大を来年度までに検討するなど、外国人労働者を受け入れる環境整備が進んでいる。

日本に憧れを持つ外国人が日本で働きながら技術を習得し、将来的には母国を発展させて日本のパートナーとなるWin-Winの関係づくりにもなる。

また、そうした外国人の中で移民として日本に残りたい人には、「日本人としての自覚を持つ教育」「日本語の教育」などの対応も必要だ。より門戸を広げるとともに、日本の国力を高めることに繋がる仕組みづくりには、しっかりとした議論が必要だ。

国家の経済成長は人口が大きなカギを握っている。また、社会保障の課題解決にも人口構成が大きく関わってくる。子や孫の世代で手遅れになる前に、日本の将来を見据えた「人口増政策」を、今こそ加速させる時である。

(HS政経塾 松澤 力)

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