35~64歳を対象にした内閣府の調査で、老後になってからの経済的な備えが足りないと感じている人が66.9%に上ることが分かり、現役世代が老後の暮らしに不安を抱いている実情が浮き彫りとなった。また、老後に生計を支える収入源を、複数回答で尋ねたところ、「厚生年金などの公的年金」の82.8%が最多だった。

しかし、公的年金は破たんする方向にある。少子高齢社会への移行に伴い、社会保障費は毎年平均で2.6兆円増えており、財源不足は深刻化するばかりだ。高齢者を支える人口の減少により、一人当たりの負担も大きくなっていくが、増税すれば景気は悪化し、日本の経済全体のパイが縮小する一方となる。「若者に支えられる人」から、むしろ「日本経済を支える人」へと高齢者についての見方を変え、負の連鎖を断ち切らなければならない。

今回の内閣府の発表では、65歳を超えても働くことを希望する人は約半数に上っている。高齢者の労働意欲を社会に取り込むためには、高齢者に「働く場」を提供することが大事になる。まず社会全体が、豊富な経験と知識を持つ大きな戦力として、高齢者を認識することが必要となろう。

また、高齢者による起業の促進も必要となる。中小企業庁の試算によると、起業者数に占める60歳代の起業は、1979年の7%から、2007年には27%と、約30年で大きく増加している。この動きがさらに促進されることが望ましい。

アメリカでは「シニア起業者」の割合が4割と、日本の先を行っている。その要因は、業界での人脈や経験にあるとする意見もある(大和総研 レポート「イノベーション生むか?増加するシニア起業」)。こうした、高齢者の持つアドバンテージを発揮してもらうためにも、起業家同士のネットワークづくりを促す必要があるだろう。

日本は、高齢者の経験や知識を「国富」に変えるような仕組みづくりで、「生涯現役社会」への移行を図らなければならない。

(HS政経塾 西邑拓真)

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