ソチ五輪で、失意の底に突き落とされた「氷上の妖精」が、感動の「挽回劇」を披露した。

金メダルが期待されていた浅田真央選手は、19日(現地時間)に行われたフィギュアスケート女子・ショートプログラムで、16位という結果に終わった。最初のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で転倒。続く3回転フリップや、後半のコンビネーションジャンプでも回転不足となり、技術点は出場30人中27番目。総合点は、自己ベストを20点以上も下回った。

演技直後のインタビューで、浅田選手は「今まで何をやってきたんだろう」と語るほど失意に沈んでいた。翌20日に、フリーの演技を控えていたが、メダルの可能性が遠のいてしまった浅田選手が、どのような演技を見せるか、多くのファンは固唾をのんで見守っていた。

しかし、浅田選手は快心の演技を披露した。6種類8回のジャンプはすべて着氷し、スピンやステップはすべて最高難易度のレベル4を獲得。自己ベスト更新の142.71点を獲得した。演技終了後、「自分の最高の演技」と語った浅田選手の目からは、涙があふれていた。

メダルに手は届かなかったが、浅田選手は最高の"挽回劇"を見せ、多くの日本人に感動を与えた。インターネット上では「涙が止まりません」「伝説になる演技でした」「メダルよりもなによりも素晴らしいものを見せてもらいました」などのコメントが相次いだ。

最悪の心理状態を乗り越えて、最高の演技をやってのけた浅田選手。彼女を"復活"させたものは何だったのか。その答えが、フリーの演技直後のコメントからうかがえる。

「昨日は五輪の怖さをまた感じてしまって、そっちの方が勝ってしまって……」と前日の心境を振り返る浅田選手。前回の2010年バンクーバー五輪では、ジャンプミスなど「後悔の残る」演技で、銀メダルにとどまり、悔し涙を流した。今回のショートでも、その時に感じた「五輪の恐怖」がよみがえってしまったというのだ。

この恐怖心は、その後も、浅田選手の心理状態に大きな影響を与えていたようだ。浅田選手はなかなか寝つけずフリー直前の朝の練習にも遅刻。周囲から見ても、明らかに様子が思わしくなかった。何とか気持ちを切り替えなければ、フリーも危ないと考えたベテランの佐藤信夫コーチは、彼女に次のような話をしたという。

それは、過去に指導した選手の例だ。1980年レークプラシッド五輪の際、男子フィギュア代表の松村充選手が、本番前に扁桃腺を腫らせて2日寝込み、十分練習もできず、食事も摂れなかった。しかしその最悪の状態の中、彼が人生で最高の滑りをしたという話だ。

それを聞いた浅田選手は「最終的にはやるしかないと。自分を信じて、自信を持って、練習してきたことを信じて、昨日のようになっても、とにかく跳ぶ」と恐怖心を払拭した。

さらに、浅田選手の思いを強くしたのは、「感謝の思い」だった。フリー後のインタビューで、ショートの際の失敗要因を、「4年間やってきたこと、支えてもらった感謝の滑りというのが薄かったなと思いました」と語った。

恐怖心を感謝の思いで消しこんだことで、自他ともに最高の演技ができたようだ。浅田選手はフリー後に、「この4年間、たくさんの方々に支えられた。最高の演技で恩返しできたのでよかった」と話している。

浅田選手の挽回劇からは、「自分を信じること」や「感謝の思い」という、極めて精神的なものの重要性が見えてくる。もちろん、こうした舞台に立つまでには、他人にはうかがい知ることのできない、心の葛藤があったはずだ。だが五輪という大舞台で、失意の底に突き落とされた浅田選手は、自らの「心の力」ではい上がり、見事な演技を披露した。

今回、浅田選手が日本人にもたらしてくれた金メダル以上の感動は、「心には力がある」ということを、改めて教えてくれたのではないか。浅田選手には、心よりの拍手を送りたい。(光)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『未来の法』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=862

幸福の科学出版 『天才打者イチロー4000本ヒットの秘密』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1024

【関連記事】

2013年8月号記事 『どうしてもネガティブに考えてしまう人へ マーフィーよりすごい!? HS流 潜在意識で勝つ方法』

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6220

2012年8月19日付本欄 ロンドン五輪で日本の金メダルは、なぜ少なかったのか?

http://the-liberty.com/article.php?item_id=4727