先のロンドン五輪では、日本が史上最多となる38個のメダルを獲得した。一方で、金メダルの数は7個にとどまり、目標の15個をかなり下回る数字だった。

この結果をどう見るかについては様々な意見があるだろうが、近年、日本の中に「ナンバーワンを目指す必要はない」という風潮が強くなったことが影響しているのではないだろうか。

2009年からの民主党政権で始まった「事業仕分け」で、次世代スーパーコンピューターの予算をめぐって、仕分け人となった蓮舫氏は、「世界一になる理由は何があるんでしょうか? 2位じゃダメなんでしょうか?」と発言した。民主党政権自体が、日本がナンバーワンを目指すことを否定していることを象徴する出来事だった。

数年前には、人気アイドルグループSMAPの「世界に一つだけの花」が流行した。さびの歌詞が「ナンバーワンにならなくてもいい。もともと特別なオンリーワン」。もちろん単なるヒット曲なので、目くじら立てるべきではないのは当然だが、もしかしたら日本人全体の意識に何らかの影響を及ぼしているのかもしれない。

日本のGDPが中国に逆転され、世界3位となったのは2010年。まるで民主党政権の誕生と重なったのは、必ずしも偶然ではないだろう。

こうした「ナンバーワンになることを否定する」風潮が、オリンピックに出場したアスリートたちに影響したのかどうか。表面意識では思っていなくても、潜在意識に「金メダルなんか取らなくてもいいじゃないか」という考え方があったとしたら根深い問題だ。

金メダルは大幅に減ったが、銀メダルや銅メダルの獲得数が増えて、史上最多のメダル数となったわけだから、ナンバーワンだけをあえて避けているようにも見える。マスコミ報道も、「総メダル数が過去最多だからいいじゃないか」というトーンだ。

ロンドン五輪を通じて考えさせられるのは、やはり日本は、もう一度ナンバーワンを目指さなければならないということだ。オリンピック自体が商業化しているという批判はあるものの、金メダリストがたくさん誕生することによって、やはりスポーツ界が活性化し、観戦客やスポーツ人口が増え、経済を引っ張る力にもなる。

言葉には力がある。国家としてもそうだが、企業や個人においても、自分が可能な部分で「世界一を目指す」ことを合言葉にしたい。超大国アメリカもヨーロッパも財政赤字で凋落傾向にあり、中国もバブル崩壊で不安定さを増している。世界を経済的にも安全保障においても引っ張っていく国がなくなろうとしている。今こそ、日本がナンバーワン国家となって、世界を導いていくという気概が必要だ。(黒)

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