幸福の科学の中学・高校の今

――新時代の宗教教育が育む子供たちの未来――

「自分のためだけの努力では、空しい感じがします。他の人を幸せにしようと思うから努力できるんじゃないでしょうか」

そう話すのは、幸福の科学学園(栃木県那須郡)の高校3年生、藤森智博君。

すべての人の魂は、大きな生命の大樹につながっている。自分も他の人も、同じ一本の木についている一枚の葉であり、自分という葉が養分を吸って幸せになることは、周りの葉が幸せになることと別ではない。同学園の「宗教」の授業で習ったそんな世界観が、藤森君の心にはいつもあるという。

日本の学校教育はさまざまな問題を抱えている。2010年度(最新の統計)のいじめ認知件数は7万7630件で、前年度より6.7%増えた。OECD(経済協力開発機構)による先進各国の生徒の学習到達度調査で、日本は2000年以降、数学と科学で国際順位を下げている。学校内における暴力行為発生件数は2000年から2010年の10年で1.5倍になった。

こうした問題に対する教育改革のモデル提示と、宗教教育による理想の教育を実現することを目指し、2010年4月、幸福の科学学園中学校・高等学校が開校した。この4月で3年目を迎え、全学年そろった同校の今を取材した。

<内容>

  • 世のため人のための夢を持つ生徒を育てる
  • 学業面でのオリジナルの取り組み
  • チアダンス部 全国大会初出場で5位に入賞
  • 2013年4月、幸福の科学学園・関西校 開校予定

左:幸福の科学学園の中庭を臨む。奥が大川隆法記念講堂、手前と右が校舎棟。
右:カフェテリアで教師と一緒に夜学習中。

世のため人のための夢を持つ生徒を育てる

幸福の科学学園中学校・高等学校(以下、幸福の科学学園)の教育理念は以下の三つである。

(1)徳力ある人材を育てる

(2)高い学力のある人材を育てる

(3)創造力のある人材を育てる

これらの理念に基づく教育を実践し、「高貴なる義務(ノーブレス・オブリージ)」を果たす真のエリートを生み出すことを目的としている。

同学園の喜島克明校長は言う。

「高貴なる義務を果たす真のエリートとは、一人でも多くの人を幸福にすることを、自分の夢、あるいは使命と感じて、そのために努力し、実際にやり抜くことのできる人のことです。何を通して人びとの幸福に貢献するか。その『何』にあたるものが、自分の強みの先にある、将来の夢なんですね。だから学園では、夢を抱く、ということをとても大切にしています。言葉を換えれば、『個人の夢。人類の夢。仏の夢。この三つの夢をかなえる学校』なんです」

個人の夢とは、生徒たち一人ひとりが生まれる前に天上界で決めてきた人生計画のことであり、『生まれる前に決めたその使命こそが、あなたの夢なんだ』と、最初に生徒たちに話して腑に落としてもらうという。入学前には『入学にあたり、夢を一つ持ってきてください』と伝えておく。その夢に沿って最初に生徒たちに志を立ててもらい、

「『その志は自分の夢でもあるけれど、それはあなたの魂が持つ使命でもある。だから絶対に自分だけの夢ではない。多くの人の幸せと一体化したものなんだ。世のため人のために貢献するような夢を、自分の夢として持ちなさい』ということを最初に伝えています」(喜島校長)

そして、その夢を実現するためには将来どんな仕事に就いたらいいか、その仕事に就くためにはどんな学校のどんな学部に入ればいいか、そのためにはどんな勉強をしていけばいいかを逆算する。個人の夢を、人類の夢である全ての人が幸福に暮らせる社会の建設と、仏の夢である信仰に基づいた地上仏国土建設と一致させてかなえられるよう、「愛の力」と「知の力」と「創造力」を持った人間を育てることを目標にしているという。

2012年4月7日、開校3年目の入学式。

開校して2年が経った現在の手ごたえについて喜島校長は話す。

「幸福の科学学園でやろうとしていることの一つは、『二等兵ではなく士官を育てる』、即ち『人に言われて動くのではなく、目の前の状況に対して自分に何ができるかを、自分の頭で考え、しかも、それを自分の力だけでなく、生徒会や寮自治会などの組織を動かしてやり遂げることができる生徒を育てる』ということです。それを生徒たちができるようになってきているので、その面で非常に生徒の精神的な成長を感じると同時に、ずっとやろうとしていたことが本当に実ってきたなと感じています」

「自分探し」を夢探しとして指導している学校の話はよく聞く。幸福の科学学園では宗教教育に基づき、自分ひとりの夢や幸福の実現にとどまらない、大きな理想を生徒の心に育くみ、多くの人々の幸福を願って学業や部活動に励むよう、指導しているのだ。

学業面でのオリジナルの取り組み

同学園では、1年目は特に生活面・信仰面の取り組みに力を入れたが、2年目から本格的に学業に力を入れ始めた。その一つとして立ち上げたのが「東大プロジェクト」である。

募集に対し、当時高2(現高3)の生徒20数人が集まった。その一人ひとりと教師が面談しながら、東大に受かるために必要な勉強のロードマップに沿って勉強計画を作った。400冊以上の参考書や問題集を研究した中から絞り込んだテキストを3~5段階にレベル分けし、本人のレベルに合った問題集をまず3回繰り返し、力がついたと判定されたら次のレベルに進む。英語のリスニングの問題を解いて解説を受ける特別講義もあるという。

東大プロジェクトでは、勉強についての心構えや勉強の仕方もユニークな方法で教えている。

「大川隆法総裁が大学受験生向けに編集された英文解釈の教材の中から、特にナポレオン・ヒルの成功哲学の『強く念う』『自分を信じる』『計画を立てる』『代償を支払う(努力し、時間をかける)』『粘り抜く』などの考え方を取り上げ、これらを実践するよう指導しています」(喜島校長)

この春、希望する高校生が全員、ブースで自習できる施設「自修館」が完成した。他の寮制の進学校では、自習時間は3時間や4時間に決められているのが普通で、トイレに行くにもサインが要るなど管理されているケースもあるが、「幸福の科学学園は『自分の頭で考える』ことを重視しますので、自習時間は2時間に設定しています。その後は自習を続ける生徒もいますし、身の回りのことをする生徒もいます」(同)

左:自修館正面。
右:自修館内のブース型自習室。

全国模試でも顕著な成績を収める生徒が何人も出ている。今年2月の河合塾の全統模試では、高2から、物理と化学で同時に全国トップの生徒と、世界史で全国トップの生徒の2人が出た。今年4月の模試でも3人が全国トップ(科目別)になった。今まで科目別で全国トップを取った生徒は、中学生のベネッセ進研模試を含めると、学園全体で8人(頭数)出ている。

英検では、2月の英検二次試験を受けた生徒が全員合格し、高2の26%が高校修了レベル(2級)以上の級を取得している他、高1の8割と中2の5割が準2級(高2レベル)以上、中1の5割が3級(中学卒業レベル)以上を取得している。準1級(大学中級レベル)も高2で3人、高1で1人出ている。

「入学時に立てた志の話につながるのですが、将来果たすべき仕事のため、世のため人のために努力しようと思うと、自分ひとりの力を超えた力が出るようです」(同)

チアダンス部 全国大会初出場で5位に入賞

部活動でも特筆すべきニュースがある。まだ1年生と2年生しかいないチアダンス部が地区大会で基準点をクリアして優勝し、3月に幕張メッセで開催された「USA Spirit Nationals 2012 全国大会」で13組中5位入賞を果たしたことだ。チアダンス部の桜沢正顕(さくらざわまさあき)顧問(世界史教諭)は言う。

「まずは、保護者の方や学園をご支援いただいている皆様に、早い段階でいい知らせをお伝えできて本当によかったと思っています。日頃支えてくださっている皆様への感謝の思いで一杯です」

幸福の科学の教えを実践すれば、著しい成長を遂げ、努力にふさわしい成功をつかみ、世の中によき影響を及ぼすことができる。そのことを、チアダンスを通して1、2年という短い時間で実現し、教えの正しさを世間に対して証明しようと努力してきたという。

「そのためには高い目標を掲げなければ、本当の意味で成長できませんので、日本一、世界一を目指しています。今回の入賞はまだ第一目標クリアにすぎません。『次は日本一、世界一を、自分たちの在学中になんとしても実現しよう』というのが部員たち皆の思いです」(同教諭)

幸福の科学学園(中学)チアダンス部。2012年3月25日の「USA Spirit Nationals 2012 全国大会」にて。

チアダンス部の中学生リーダー、新中学3年生の神野杏奈さんは言う。

「一番は、私たちを支えてくださった方々、幸福の科学の信者さんや学園生の皆さん、教職員の方々や両親、何よりも大川隆法総裁先生に対する感謝の思いを込めて踊りきることができて、すごくよかったです」

神野さんには、日本広し、世界広しといえども、全員がエル・カンターレ信仰を持っているチームは現時点では自分たちしかいないという思いがあったという。

「『私たちが踊って結果を残すことで、信仰の素晴らしさを知っていただくんだ』という使命感をもって踊りきることができたと思います。全国大会初参加だったので、大会に出るまでの練習の過程で、どうやってチームをまとめればいいか、どういう練習をすれば一番上手くなれるのかが分からなくて悩みました。でも、先輩方にアドバイスを沢山もらったので乗り越えることができました」(神野さん)

神野さんの言葉にもあるが、同学園の生徒の特徴の一つは、何事にも感謝の思いが強いことだ。例えば生徒の多くは奨学金を受けて学園生活を送っており、夏と冬の年2回、奨学金の提供者に感謝の手紙を書く。桜沢教諭は、「生徒同士の間にも互いに対する感謝の思いがあるから、部活動においても通常の学校に比べて生徒間の人間関係などの問題が起きにくいし、ハードな練習も悲壮なムードに陥ったりせず続けられるのだと思います」と言う。

また、部活動などを通して生徒と接した地元の住民たちは異口同音に、生徒たちの明るさや礼儀正しさを口にする。大田原市でテニスコート業とカフェを営む夫妻は、同学園のテニス部の生徒の印象をこう話す。

「幸福の科学学園の子供たちの特徴は、礼儀正しい、明るい、仲がいい、よく助け合う。そして、何と言っても本当に皆、素直なことです。彼らのテニスを見ていても、皆、一生懸命で、実力もどんどん伸びています」

感謝の心や礼儀正しさ、助け合いを教える「徳育」の部分は、日本の学校教育がいちばん取り戻すべきものの一つではないか。

2013年4月、幸福の科学学園関西中学校・高等学校 開校予定

同校の兄弟校として、幸福の科学学園関西中学校・高等学校(以下、幸福の科学学園関西校)が2013年4月に開校を予定している(学校設置認可申請中)。予定地は滋賀県大津市仰木の里東2丁目16番地。JR湖西線「おごと温泉駅」から徒歩15分の立地だ。

幸福の科学学園関西校も那須本校同様、「徳力ある人材」「高い実力のある人材」「創造力のある人材」の輩出を教育理念に掲げるが、那須本校に比べ、より実学を重視し、企業家を招いて話を聞くなど経営者教育に重点を置く予定だという。また、那須本校は全寮制だが、関西校は寮と通学がある。

子供が関西校の高校を受験予定の塩田賀代子さん(大阪府在住)は話す。

「今の学校教育は、そつなく何でもこなす秀才型をつくろうとしていると思います。うちの子は、できるところとできないところの差が大きいので、一人ひとりの長所をしっかりケアして伸ばしてくれることを期待して、幸福の科学学園に行かせたいと思っています。関西は自由で発展・繁栄の気風が強い土地なので、秀才型というよりは天才型の子供を育てて、日本の未来を創っていってほしい」

幸福の科学学園関西校工事現場。現在は躯体工事中。2012年12月に施工完了する。

幸福の科学学園那須本校は、幸福の科学の宗教教育をバックボーンに据え、開校2年を過ぎて顕著な成果を上げつつある。来春には大学受験の合格実績を通して、その真価がいっそう明らかになることだろう。さらに、関西校の開校により、日本の東西で、新時代の宗教教育の成果が示されることを期待したい。