中国海軍のミサイル駆逐艦など8隻の艦艇のほか潜水艦1隻が、8日未明から昼にかけて、沖縄本島と宮古島の間の排他的経済水域を太平洋側に向けて通過したと、防衛省が同日発表した。太平洋上で演習を行うとみられる。

中国海軍は昨年4月と7月にも同じ海域を通過し、艦載ヘリが海上自衛隊の護衛艦に異常接近するなどしている。

中国の海洋進出をめぐっては、5日までシンガポールで行われたアジア安全保障会議でアメリカと中国が激しいつばぜり合いを演じた。

中国の梁光烈国防相は「南シナ海の航行の自由に問題はない。状況は安定している」と言い放ったのに対し、ベトナムの国防相はベトナム調査船のケーブルが中国監視船に切断されたことに触れ、「実際の行動で示してもらいたい」と反発。フィリピンの国防相も中国が南シナ海で新たな建造物を建設していることを批判した。

アメリカのゲーツ国防長官は、「南シナ海の航行の自由は国益」と宣言。米軍の役割について、「100ドル賭けてもいい。5年後も(米軍のプレゼンスは)今と同じ状況にある」と強調した。

ゲーツ長官が海洋覇権の獲得に動く中国をけん制した格好だが、「賭けるのはたったの100ドルなのか?」「5年から先は米軍がいなくなるかもしれないのか?」と、うがった見方もできる。

実際、6月で退任するゲーツ長官は5月に行った最後の政策スピーチで、今後、財政赤字のために防衛費を大幅に削減しなければならない見通しを語った。これまでオバマ大統領が防衛費に大なたを振るおうとしてきたが、ゲーツ長官がぎりぎりのところで踏ん張ってきた経緯がある。しかし、国防長官が交代することで防衛費カットは一気に進むだろう。

ゲーツ長官が語った「100ドル」「5年後」の数字は、米軍がアジアにいつまで居続けるか分からないことを示している。

中国は、米軍がじわじわと後退していくことを見通して海洋進出を仕掛けている。今回の中国海軍の沖縄近海通過もその一環だ。

日本は5年後、10年後に備えた対中戦略が求められる。(織)