米国務省が企業に送った書簡。

《本記事のポイント》

  • 米国務省、大手企業にサプライチェーンの「脱中国」を求める書簡を送付
  • 今後、香港弾圧に加担する企業も制裁か
  • 中国国内の人権侵害に関与する個人や組織と取引すること自体が、人権侵害に加担

米国務省が、大手企業ウォルマートやアップル、アマゾン・ドット・コムなどに対し、各社のサプライチェーンが新疆ウイグル自治区の強制労働や人権侵害に関わっているリスクがあると警告する書簡を送付した。

国務省は、中国政府が「香港国家安全維持法」を施行した直後の7月1日付で、キース・クラッチ次官の名前で書簡を送付した。同書には、「新疆ウイグル自治区で営業しているか、同自治区に関連がある企業との提携、投資、支援につながるリスクに対するエクスポージャー(割合)を検証する必要がある」と明記。企業に「脱中国」を促す同省は、サプライチェーンに対する調査する諮問機関を立ち上げた。

ポンペオ国務長官は「企業の経営陣は風評被害、経済損失、法的リスクを認識すべきだ」と注意を促した。このタイミングに合わせるかのように、税関・国境取締局は2日付の声明で、ウイグルの強制労働で生産されたとみられる人毛のヘア・エクステンションを押収したと発表した。

すでに、有名ブランドのラコステとアディダスは、ウイグル弾圧に関与するサプライヤーや下請け業者との取引を停止すると宣言した。

BMWやフォルクスワーゲン、ナイキ、サムスン、ソニー、任天堂、日立製作所などのサプライチェーンも、強制労働に関与している可能性があると指摘されており、各社の対応が注視されている。

香港弾圧に加担する企業も制裁か

アメリカ政府がウイグルの人権問題への対抗措置をとったのは、人権制裁法とされるグローバル・マグニツキー法に基づき、ウイグル弾圧に関わる中国当局者に制裁を科す「ウイグル人権法」が、6月17日に成立したためだ。

さらに、ウイグル人権法と類似した法律は「香港人権法」と「チベット人権法」がある。理論的には、香港やチベット弾圧に関与するグローバルブランドも、サプライチェーンの「脱中国」を促される可能性がある。

世界で生まれつつある新しい常識は、直接的であれ、間接的であれ、中国国内の人権侵害に関与する個人や組織と取引すること自体が、「人権侵害に加担する」と問題視されることだ。

日本もこうした認識を持つべきだが、外務省は国務省のような通知を企業に送っておらず、政府としても人権問題とサプライチェーンを結び付けて、「脱中国」を強く促すようなことはしていない。

日本政府は「善悪の観点」から、脱中国による国内回帰を促す必要がある。また、日本企業も、自らの商取引(商品等)が、ウイグルの弾圧や香港の人権弾圧・監視に用いられていないかどうか、よほどの注意が必要だろう。

(山本慧)

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