《本記事のポイント》

  • 習近平氏への"反抗"続ける李克強首相
  • 中国内からも露骨な習近平批判相次ぐ
  • 韓国瑜リコールで台湾工作も敗北

中国内外で、習近平政権を本格的に揺るがすような狼煙(のろし)が上がっている。

本欄でもご紹介した通り、第13期全国人民代表大会(第3回会議)の記者会見で、李克強・中国首相が「中国には月収1000元の人が6億人いる」と暴露した。これは明らかに習近平主席に対する当てつけだろう。

さらに李首相は6月1日、山東省煙台市の古い集合住宅を視察し、「屋台経済、小規模店舗経済は重要な雇用の源であり、中国の生命力だ」と語り、「露天商経済」を称賛している。

けれども、今まで当局は、露店商を蹴散らしてきた経緯がある。とりわけ、トウ小平路線を捨て、社会主義路線への回帰を目指す習近平主席は、この資本主義的な「露店商経済」の発展を好ましく思っていない。

今後、習主席と李首相との党内バトルは、どのような決着を見るか予断を許さないだろう。

中国内からも露骨な習近平批判相次ぐ

翌2日には中国共産党内で「習解任を協議する会議」が開催されたと言われている。その中では、中国共産党中央党校の蔡霞教授による「中国共産党は『政治的ゾンビ』であり、習主席はギャングのボスになった」という音声がリークされたとか。党内で、このような会議が開催されることが異常であり、もし本当なら、一種の"クーデター"とも考えられる。

その2日後の6月4日は、天安門事件31周年記念だった。同日、スペインに住む中国サッカー界のレジェンドであるカク海東が、妻の葉ショウ穎(バドミントンの世界チャンピオン)と共にYouTubeで「中国共産党の打倒」と「新中国連邦」成立を世界に呼びかけた。これも、きわめて異例である。

韓国瑜リコールで台湾工作も敗北

中国の台湾工作についても、完全敗北を象徴する事件が起きた。

6日、台湾の高雄市で韓国瑜市長に対するリコール投票が行われ、即日、開票された。リコールには、有権者約230万人中、4分の1以上である約57.5万人の同意が必要である。

リコール運動を展開した市民団体は、韓氏が市長選の際に「総統選には出ない」と明言して当選したが、韓氏は「その公約を破って総統選に出馬した」と批判した。

結局、投票率は42.14%、圧倒的賛成(93万9090票)で同市長は解職という結果に終わっている(反対はわずか2万5051票)。

中央直轄市長のリコールは台湾政治史上初めてである。韓氏の解職から3カ月以内に市長選が実施される。ただし、韓氏は4年間、同市長選に出馬できない。

2018年11月、台湾統一地方選挙の際、習近平政権は韓氏を支援した。北京にとって、今回のリコールは痛手だったのではないだろうか。

虚しく響く"対ウィルス武勇伝"

追い込まれつつある北京政府だが、世論戦における"反撃"に必死だ。

北京政府は6月7日、『新型肺炎の流行に対する中国の行動(武漢肺炎ウイルス白書)』なるものを発表した。

前言、本文、そして終末語を含めて約3万7000華字の大論文である。本文は(1)中国での伝染病撲滅の険しい旅程、(2)制御と治療の二つの戦場での共同作戦、(3)疫病に対する強力な抵抗力を結集、(4)人類保健健康共同体を構築といった、4つの"勇ましい"内容で構成されている。

その中で中国共産党は、新型肺炎流行を制圧し、かつ、他国に対し、マスクや防護服を送ったことを自画自賛している。他方、いち早く「新型肺炎」に関して警告を発して当局に制止され、まもなく病死した李文亮医師への言及はないという。

こうした白書が中国共産党の信頼を高めるわけもなく、習政権はますます追いつめられていくだけだろう。

アジア太平洋交流学会会長

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

【関連書籍】

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