日本はコロナ禍の中、北朝鮮のミサイル危機にも気を引き締めよ 【HSU河田成治氏寄稿】

日本はコロナ禍の中、北朝鮮のミサイル危機にも気を引き締めよ 【HSU河田成治氏寄稿】

 

《本記事のポイント》

  • 高性能化する北朝鮮の新型ミサイルで、在韓米軍の撤退圧力が高まる
  • 韓国から米軍が撤退すれば、日本は全体主義防衛の最前線となる
  • 日本は「災害対策基本法」の抜本的見直しを

 

 

中国発のコロナウィルスが全世界で猛威を振るっている。独裁政権・情報統制下の北朝鮮は、依然として「国内に感染者はいない」と主張しているものの、中国と国境を接し、経済的にもそのほとんどを依存してきた北朝鮮が、コロナ禍から完全に逃れることは、事実上不可能だ。

 

医療・薬品が十分でなく、国民の栄養状態や衛生環境が劣悪な北朝鮮にあっては、むしろ感染が蔓延し、危機的状況を迎えている可能性もある。在韓米軍のエイブラムズ司令官は、偵察衛星や偵察機などの情報収集により、「北朝鮮軍が約30日間にわたって軍事活動を停止していた」と語っているが、常に集団で行動を共にし、濃厚接触を続ける必要がある北朝鮮軍内で、新型肺炎が広がっているとも考えられる。

 

こうした中、北はミサイル発射をハイペースで行っている。ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)未来創造学部で軍事学や国際政治を教える河田成治アソシエイト・プロフェッサーがその理由を分析した。

 

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昨年5月から30発以上も発射

元航空自衛官

河田 成治

プロフィール

(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。

ベトナム・ハノイで行われた昨年2月の第二回米朝首脳会談は、事実上の決裂でした。その後、北朝鮮はそれまで17カ月間も自粛してきたミサイル発射を突然再開しました。しかもその頻度は、過去になかったハイペースです。

 

ここで注目すべきは、発射されたミサイルがアメリカの識別名で、KN-23(ロシアのイスカンデルに酷似)、KN-24(アメリカのATACMSに酷似)、KN-25(多連装ロケット, MRLS)、KN-26(潜水艦発射型, 北極星3)と呼ばれるものですが、これらが能力を大幅に向上させた新型であることです。昨年の5月以降、30発以上ものミサイルが発射されており、特に今年の3月には4回の実験を行い、計9発ものミサイルを発射しています。

 

 

高性能の新型ミサイル

上記の一連の新型ミサイル(KN-23、KN-24、KN-25)は、射程が400から500km程度で日本には届きませんが、韓国全土が射程圏内に入ります。

 

これらの特徴は、防衛を困難にする新技術が採用されていることです。高度約50km以下の低高度軌道を飛翔し、飛行経路全般でコース修正を行うことができるため、韓国軍や在韓米軍による防衛が困難になります。

 

具体的には、韓国に配備されたTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)やイージスから発射する防衛用のミサイルの最低迎撃高度以下を飛翔しますので、THAADやイージス艦から防ぐことができません。

 

なお着弾地点付近ではPAC-3(ペトリオット,ミサイル防衛システム)で迎撃できる可能性は高まりますが、防衛できる範囲が限られてしまいます。さらに北朝鮮のミサイルは命中精度に問題がありましたが、これら新型は格段に精度が上がると推測されています。

 

これらのことから、新型ミサイルは、在韓米軍への攻撃力を格段に高め、常に攻撃の脅威に晒される在韓米軍には、基地縮小や撤退の圧力がかかる可能性があります。北朝鮮の狙いの一つは、この点にあるかもしれません。

 

 

新型ミサイルの意図

アメリカは、反米で親中・親北政策をとる韓国の文在寅政権を信用していません。現在の米韓関係は冷え切っており、在韓米軍の駐留経費に関する7回目協議も決裂に終わりました。いまだに今年度の在韓米軍の駐留経費について合意が得られておらず、在韓米軍に勤務する約8600人の韓国人のうち、約4000人が無給休職の状態になりました。(4月1日現在)

 

米韓の関係悪化は、日本にとっても大きな問題です。現代の国家間の同盟関係は、相互の国益とともに信頼関係や価値観の共有が極めて重要になっています。韓国政府が反米になり、相互の信頼関係がゆらいで同盟としての絆が弱体化したところへ、さらに北朝鮮の新型ミサイルが在韓米軍への脅威を高めれば、在韓米軍の基地縮小や撤退への誘因材料となりかねないからです。

 

 

全体主義防衛の最前線となる日本

韓国から米軍がいなくなれば、朝鮮半島は不安定となり、親中・親北朝鮮の国家となる最悪の事態に備えなくてはならなくなります。それは、同時に日本が全体主義国家との対決の最前線に置かれることを意味します。

 

歴史的にも朝鮮半島が不安定となる時代は、日本の危機とイコールでした。日清・日露戦争は朝鮮半島情勢によって起きた戦争であり、日本の命運をかけた大戦争でした。

 

このように、北朝鮮の新型ミサイルが日本に届かないからといって、日本の安全保障と無関係なわけではありません。

 

 

国内事情としてのミサイル発射

コロナウィルスの影響を受け、北朝鮮は極めて厳しい状況に追い込まれており、あるいは体制崩壊の危機にあると推測されます。それは国連やアメリカなどからの厳しい経済制裁で、外国からの貿易による収入が断たれてしまったからです。

 

それでも違法に中国などと密輸を続けてきましたが、コロナウィルスの発生で国境を閉鎖して物資と人の往来を禁止せざるを得なくなりました。その結果、ただでさえ高騰する物価が、さらに上昇しています。米価は昨年同期に比べ30%程度上昇しているようです。(米国の北朝鮮情報分析ウェブサイト 38 NORTHより)

 

加えて北朝鮮は深刻な食糧不足にあり、国民の半数近くが飢餓線上にあるとの情報もあります。特にこの季節は、昨年の収穫物を食べ尽くし、新たな作物が得られる前の最も厳しい食糧危機の時期にあたります。

 

このような国内情勢を鎮め、体制を維持することこそが金正恩朝鮮労働党委員長にとって喫緊の課題であることは明白でしょう。日本国内の報道でも、「ミサイル発射は北朝鮮の国内事情によるもの」との見方が支配的です。

 

つまりミサイル発射は「国の危機的状況のカモフラージュ」であって、精強な軍隊のふりをアピールすることで、北朝鮮の国内向けには「新型肺炎の蔓延・飢餓の深刻化」を隠し、国民の動揺を鎮めて体制を引き締める目的と思われ、国外向けには金委員長の健在ぶりと、国力の衰退・軍隊の弱体化を隠すために威嚇を繰り返しているとも推測できます。

 

 

見落としてはならない北朝鮮の脅威

日本の報道は、北朝鮮のミサイル発射に対する危機感はあまり高くないように見受けられます。しかし見落としてはならないのは、アメリカにとっては、本土に届かない短距離ミサイルは脅威度が低いため、北朝鮮問題の優先度が低くなっていることです。

 

一方で北朝鮮の核・ミサイルは1発たりとも破棄されたわけではなく、むしろその間にも増産・配備が続いており、それらの兵器には日本を射程に収めているものが多数あります。体制の末期にはどのような暴発が起きるか、予断を許しません。

 

さらに北朝鮮は、化学兵器や生物兵器を多量に保有しています。2019年1月15日付米ニューヨーク・タイムズ紙は、「北朝鮮が実際に大量破壊兵器を使用するとすれば、それは核よりも、生物兵器の可能性の方がむしろ高い」と報じています(North Korea's Less-Known Military Threat: Biological Weapons)。

 

コロナウィルスにより、生物兵器が使われたときの恐ろしさは、全世界の人類が身をもって体験している最中です。それは軍事的な脅威のみならず、経済を崩壊させる破壊力をも持っています。

 

 

様々な国防の危機にいっそうの備えを

日本政府は、北朝鮮によるミサイル発射の度に、日本のEEZ(排他的経済水域)に入ったかどうかというレベルの認識しか示さず、遺憾の表明以上に何も行動を起こしていません。

 

しかし核などの大量破壊兵器を保持し、日本などへの威嚇を続ける金委員長の独裁体制を許すべきではなく、日本は直接の当事者として北朝鮮にもっと圧力をかけるべきです。

 

また、ミサイルのみならず、中国の大量破壊兵器(核・化学・生物兵器等)はさらに脅威度が高いことに鑑みて、それらの攻撃に備えての、いっそうの防衛努力は欠くべからざる課題です。

 

 

日本の危機管理体制や「災害対策基本法」の抜本的見直しを

さらにはコロナウィルス対策から得た教訓から、防衛省・自衛隊を中心とした防衛政策だけでなく、国民生活を直撃する事態に備えた、国内の「国民保護政策」や「危機管理体制」の見直しへつなげていく重要性が極めて高いと考えます。

 

現在の日本の防災対策は、災害が起きてからの救助や援助、被災者対応に重点が置かれ、災害が起きる前の体制づくりや対応についての視点に欠けています。それは国の定める「災害対策基本法」が、どちらかというと発災後の対応に重きを置いていることから、前兆段階での防災対応について不十分になりやすいためです。

 

また防災対策は「基本的に市町村の責任」とされている問題があります。つまり防災・危機管理が地方自治体の枠の中で考えられており、他の自治体との協力があまり考慮されていないのです。

 

しかし近年は、広域災害の発生が多く、自治体単位の対策・避難には限界があります。コロナウィルス感染拡大の措置も、都道府県の首長がバラバラに動いていて、近隣の他県との連携が不十分になっているのではないでしょうか。

 

 

日本はアジアのリーダーとして北朝鮮を教導せよ

かつて敗戦の責任を痛感された昭和天皇は、マッカーサーへ「私はどうなってもいいから国民を救ってほしい」と述べられました。その徳ある姿が、戦後の日本の繁栄の原点ともなったと思います。

 

一方の金委員長は、国民の飢餓・不幸を放置して、自身が目先を生き延びるためだけに、他国を威嚇しています。本物の国家のリーダーなら、自らを犠牲にしてでも国民の幸福を願うべきで、すべての核・ミサイル・その他の武装を放棄し、自己の処遇と引き換えにしてでも、国際社会から物資援助や新型肺炎に対する医療支援を請い願うべきでしょう。

 

中国の習近平国家主席も、コロナウィルスの初動対応に失敗して全世界に蔓延させた犯人であるにもかかわらず、責任を地方やアメリカに転嫁し、自らは救国のヒーローだというイメージづくりに熱心です。ここに全体主義的独裁者の悪魔的な本質が露呈しています。

 

日本は、アジアのリーダーとしての責任を自覚し、金氏や習氏に対し、リーダーとしてのあり方を教導すべきです。国民を不幸にする独裁者をこのまま放置することは許されません。

 

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タグ: HSU  河田成治  北朝鮮  金正恩  ミサイル  北極星3  PAC-3  食糧不足  生物兵器  

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