フードスタンプの見直しに向けて動くトランプ政権 勤労は神に捧げる行為

フードスタンプの見直しに向けて動くトランプ政権 勤労は神に捧げる行為

写真:Jonathan Weiss / Shutterstock.com

 

《本記事のポイント》

  • アメリカは、労働人口の4.5人に1人がフードスタンプを受給する「食糧配給社会」
  • 男性の労働市場参加率は先進国の中で低くなった
  • 行政当局は福祉の離脱率を成果指標にすべき

 

トランプ米政権は今週、2021年会計年度(20年10月~21年9月)の予算教書を公表した。

 

大統領の財政方針を示す予算教書は、一般教書や大統領経済報告と並ぶ「三大教書」の一つ。財政は上下両院に決定権があり、予算教書には法的拘束力はない。だが議会の審議の土台となる。

 

トランプ政権はその予算教書の中で、社会保障費などの圧縮で年1兆ドル(約110兆円)の財政赤字を、5年で半減することを提案した。大統領選の年に、社会保障費の圧縮を掲げることは、バラマキで票を"買収"する意思がないことを示す、勇気のある大胆な公約と言える。

 

 

約4.5人に1人がフードスタンプ受給者という「食糧配給社会」

社会保障費の圧縮の対象となっているのが、いわゆるフードスタンプ(低所得者向け食費補助)だ。

 

フードスタンプとは、電子カードとして給付される金券の一種。国内のほとんどの食料品店で使うことができる。州によって受給者の資格条件は異なるが、平均で一世帯当たりの月額の収入が2500ドル以下なら、フードスタンプをもらえる州が多い。

 

現在の受給者数は約3640万人いる。全米人口の約9%であり、全労働人口の約4.5人に1人の計算となる。3600万人といえば、カナダの人口に相当する。それだけ多くの人に食料を「配給」している状態だ。2020年度はフードスタンプだけで、950億ドル(10兆4千億円)の予算を計上している。

 

リベラル派は、フードスタンプは政府が経済を活性化できる最も有効な方法の1つだと主張する。フードスタンプによる給付金1ドルにつき、国内総生産(GDP)が1.79ドル押し上げられるという試算もある。

 

 

フードスタンプは働かない人を増やす

リベラル派の政策には、いくつもの問題がありそうだ。

 

とりわけ問題になるのが、「怠惰な人間をつくる元凶になる」という点だ。現行のフードスタンプの制度には、就労が義務付けられていない。

 

つまり、フードスタンプの「依存」は、働かなくても食べていける構造になっており、健常な成人が働かない社会をつくり出している。

 

アメリカでは、トランプ政権の経済政策の結果、景気が上向き、700万人もの雇用が創出された。一方で、600万人しか職探しをしていない。18歳から49歳の健常者で働こうと思えば働ける人々が、仕事をせずにフードスタンプに依存している。

 

「景気はよくなったが、労働市場には働き手がいない」という事態に陥っているわけだ。

 

 

オバマ前大統領がフードスタンプの受給条件を緩和

そもそもこうした状況になったのは、オバマ前政権が、1996年の福祉制度改革を撤廃し、福祉国家政策を推し進めたことにある。オバマ政権下のフードスタンプの支出は、2007年に比べて2倍以上に増えた。

 

1996年の改革では、フードスタンプの受給条件に1週間あたり最低20時間の就労や、職業訓練プログラムへの参加、1カ月あたり24時間のボランティア活動が義務付けられていた。

 

ただ、失業率が10%を超える州はこの条件を除外することができるため、それがなし崩し的に広がった。現在、受給条件を除外する33の州の失業率は、平均4.5%程度であるにもかかわらず、就労条件を義務付けることなく、無償でフードスタンプを提供している。

 

その結果、25歳から50歳の男性の労働市場参加率は、先進国の中でイタリアに次いで低くなってしまったのである。

 

 

政府は福祉からの離脱者の増加を成果とすべき

一部の州は改革に乗り出している。

 

例えばメイン州では、同州の健康福祉長官のリーダーシップにより、健常な成人がフードスタンプを受け取る就業条件を厳格にした。その結果、プログラムの登録者は、1万6000件から4500件に減少。労働市場に復帰した1万1500人の平均所得は2倍になったという。

 

行政当局が間違いを犯すのは、「福祉の取り扱い件数の増加をもって成果だ」と考えてしまうことにある。メイン州もそれまでは、フードスタンプの取扱件数が増えることをもって、福祉プログラムの成功を測定していた。

 

そこで健康福祉長官が、収入を増やし、フードスタンプに依存しない人の数の増加を成果指標に据えたことで、行政当局の生産性が高まったと言える。

 

 

「働くことは自分の仕事を神に捧げるための行動」

トランプ政権は「成果」を上げる州を増やそうと、各州に受給条件の厳格化を求める予定だ。2021年までに、約110万人が就労を求めるとみられ、68万人ほどが受給資格を失うと試算されている。

 

トランプ氏は、2011年に発刊した著書『TIME TO GET TOUGH』(『タフな米国を取り戻せ』)の中で、フードスタンプについてこう述べている。

 

「五体満足な米国人が、福祉による人生、納税者にサポートされる人生を受け入れることを奨励する政府など、モラルが欠如しているとしか言いようがない。我らの建国の父は、自立は自由の軸になるものだということを理解していた」

 

「米国の労働倫理こそ、多くの米国人がかつて豊かだったこの国を作った原動力だ。懸命に働くことは、自分の仕事を神に捧げるためのスピリチュアルな行動であり、日々の生活を精一杯頑張る力になるのだ」

 

「建国の父たちは、政府の役割とは個人ができないことだけをすることだという信念を持っていた。しかし我々は今、米国を偉大な国家にしたこの自立の精神を急速に失い始めている」

 

高級車を乗り回す受給者やドラック中毒でも受給できるという不正受給も目立つようになったフードスタンプ。そもそも働かずとも永続的に「受給」できるとなれば、政府が「労働倫理」を進んで破壊するようなものだ。

 

労働参加率が低ければ、トランプ政権が今後10年で2700万人の雇用を創出しても働き手がいなくなる。GDP年率3%の成長も絵に描いた餅になる。

 

繁栄するアメリカをもう一度創るために、アメリカを偉大にした自立の精神を取り戻す──。その意気込みが表れた予算教書だった。

(長華子)

 

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大川隆法著 幸福の科学出版

 

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タグ: トランプ政権  フードスタンプ  食糧配給  労働人口  雇用  失業率  

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