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《本記事のポイント》

  • 今回の火災で燃えたのは1000万ha。昨年は5000万ha燃えている
  • オーストラリアの学者は、森林火災の13%は放火で、37%は放火の疑いがあると指摘
  • 人為的な影響を無視し、地球温暖化が原因と断定的に報じる印象操作

森林火災による大規模な被害が起きたオーストラリア。多くのメディアは、1000万ヘクタール(ha)以上を燃やし尽くしたこの事件を、地球温暖化が進んでいるとの文脈で報じ、一部メディアは「地球の未来にはこのような事態が待ち受けている」かのように悲観的に伝え、国民の恐怖心を煽っている。

だが、冷静になって考えたいのは、「本当に地球温暖化と関係しているのか」ということだ。

オーストラリアが温暖化対策に消極的なためか

グローバル・ワイルドファイヤー・インフォメーション・システムのデータをみると、オーストラリアで発生した森林火災は、確かに増加傾向にある(グラフ参照)。

しかしその一方で、マスコミが大きく取り上げた焼失面積は、減少傾向を見せているのだ。例えば2018年は、5000万haを超える面積が燃えている。

つまり、焼失面積の大きさを基準に、今回の火災を異常気象として報じるのは、客観的な見方ではない。残念なことに、オーストラリアにとって森林火災は、毎年起きる"風物詩"のようなものになっている。

なぜ今回の事件がこれほど騒がれるようになったのか。それは、冒頭で紹介したように、地球温暖化の脅威論を煽る風潮が強まっているためだろう。

オーストラリアは、世界の温室効果ガス排出量に占める割合が1.3%に上る。しかし国民1人当たりの排出量に置きかえると、世界で2番目に排出している国となる。

また森林火災が増えれば、地球温暖化の脅威論者が憎む二酸化炭素が多く排出される問題がある。今回の火事では、「約4億トンの二酸化炭素が排出された」と推定する見方もある。

今回の事件をきっかけに、オーストラリア政府に対し、地球温暖化対策を本格化させたい左翼的な各国マスコミの意図がうかがえる。同国は昨年、日本と同じく、地球温暖化対策に消極的であるとして「化石賞」を贈られた経緯もある。

地球温暖化が原因と断定できるのか

一方で、日本を除いた多くの外国メディアで物議を醸したのは、オーストラリアではここ数カ月の間に、地元警察が放火の疑いなどで183人を調査したということだ。

オーストラリアで実施された2008年の調査によれば、「山火事の約85%が人為的な影響だった」という。また同国のモナシュ大学のポール・リード上級講師は、森林火災の13%は放火であり、37%は放火の疑いがあると指摘している。

子供の火遊びやバーベキューなどで火災が発生することも、オーストラリアでは問題となっている。

火事の原因を究明することなく、一方的に地球温暖化が原因であるかように報じるやり方は、典型的な印象操作と言える。もし森林火災を抑制したいのであれば、人間がしっかりと火を管理すること、そして荒れた森を管理し、延焼を防ぐといった、人間と自然の共生に向けた対策を呼び掛ける方がいいのではないだろうか。

(山本慧)

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