写真:Alexander Khitrov / Shutterstock.com

《本記事のポイント》

  • 「反習近平派」は複数のグループがある
  • 経済失速、香港問題で足元崩す
  • インドでもブラックな歓迎

中国の習近平・国家主席の求心力が近年、急速に低下している。

主要政策や人事を討議する重要会議である「第19期中央委員会第四回全体会議(四中全会)」が24日に開催される。中国経済、香港問題、米中貿易戦争、人事などが主要なテーマとなるだろう。

実はこの「四中全会」だが、今まで2年近くも順延されている。というのも、会議を開くと習氏が「反習近平派」の集中砲火を浴びることが必至だったからだ。

複数のグループがある「反習近平派」

党内の「反習近平派」はいくつかのグループに分けられる。

まず、政治局常務委員会の中で、習氏に不満を抱き、陰に陽に抵抗する人たち。そして、習氏が彼らの頭越しに金を稼いでいることに不満を持っている「紅二代」(革命家2世)や「官二代」(官僚2世)ら。他にも、様々な反対勢力・不協力勢力が存在し、党中央をかく乱し、海外に情報を流すなどしている。

経済失速が足元を崩す

そんな「反習近平派」の勢いは、日に日に増している。中国経済が悪化の一途をたどっているためだ。主要な理由は、「米中貿易戦争」である。しかしそれだけではなく、習氏の明らかな失政によるものもある。

習政権は「混合所有制」という奇妙な社会主義政策を打ち出した。民間と国有企業を合体させるというものだ。これは言葉を変えれば、中国共産党が民間企業を"搾取"することに他ならない。民間企業のトップたちはやる気を失って当然だ。

そんなこともあってか、最近、中国で「BAT」と言われた3大IT企業のリーダーである、百度(バイドゥ)の李彦宏氏(ロビン・リー)、アリババの馬雲氏(ジャック・マー)、テンセントの馬化騰氏(ポニー・マー)らが、次々と一線を退く事態となっている。

香港の混乱でも足を引っ張る

習氏の求心力低下は、香港問題でも明らかである。

北京政府は、香港政府にデモ隊を鎮圧するよう圧力をかけた。だが、香港政府は依然としてデモを収束できていない。

米国は連邦議会下院が10月15日、「香港人権・民主法案」を全会一致で可決した。今後、上院で法案が審議される。米国は香港問題で中国に圧力をかけ続け、習氏の求心力はさらに下がることとなる。

インドでもブラックな歓迎

習氏は10月中旬にインドを訪問し、モディ首相と2度目の非公式会談を行った。そこでは、中印の紛争地域であるカシミール問題が取り上げられなかった。「米中貿易戦争」で苦しむなか、中国は味方を増やそうと秋波を送っているのだろう。

しかし、インドを訪問した習氏はとんだ"歓迎"を受けた。インドの学生約2000人が、「WELCOME 習近平」という人文字をつくったのだが、その全員が習氏の仮面をつけていたのである。これは、香港政府が施行した「覆面禁止法」を強烈に皮肉ったものだ。インド人に流れる、英国流のブラックユーモアである。

世界からの"冷たい視線"も、習氏の求心力低下を後押ししているのだろう。

拓殖大学海外事情研究所

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~2005年夏にかけて台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011年4月~2014年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界新書)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

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