どうなる米中貿易交渉? 金融戦争へと移行中のアメリカ

どうなる米中貿易交渉? 金融戦争へと移行中のアメリカ

 

《本記事のポイント》

  • 中国に約束を履行させる仕組みづくりが争点
  • 為替操作条項から見える金融戦争
  • 中国との関係改善に突き進む日本に必要な戦略とは

 

各国の市場関係者がかたずをのんで見守っているのが、米中貿易戦争の行方だろう。

 

ムニューシン米財務長官は13日、米中貿易交渉の協議は「最終ラウンドに近づいていることに期待を寄せている」と述べた。あと3週間ほどで何らかの決着を見る予定だった協議だが、「トランプ大統領は、正しい取引(right deal)を求めている」として、合意までのスケジュールは流動化している。

 

これまで報道された合意内容は、中国は2024年までに1兆ドル(約110兆円)の輸入拡大を提案していることや、両政府が中国の為替操作の防止策を盛り込むことで一致したことなどである。

 

 

難航する中国に約束を履行させるメカニズムづくり

焦点となっているのは、知的財産の侵害や技術移転の強要に関し、中国がアメリカとの約束違反をした場合に、約束を履行するメカニズムをどうつくるのか、合意を守らせるために追加関税を課す選択肢を残すかどうかである。

 

これに関しムニューシン氏は、「履行を確実にするための組織」を創設し、約束を履行させるためのメカニズムをつくることに合意をしたと、10日のCNBCニュースで語っている。

 

だが、中国が約束を破った場合に、アメリカは追加関税でペナルティを科すかどうかについて聞かれると、「関税については交渉の詳細に立ち入ることになるため」として明言を避けた。

 

2月の時点でライトハイザー米通商代表部が議会下院の公聴会で証言した際には、約束の不履行の場合には、追加関税をかける可能性があるとしていた。

 

 

貿易戦争を終わらせたい中国

これまでアメリカは、3回にわたって計2500億ドル分の中国製品に制裁関税を発動してきた。これに対して中国は、決着後、双方がただちに追加関税を全廃すべきだと主張している。貿易関税によって、中国経済が打撃を受けているからだ。

 

3月の全国人民代表大会で、中国政府は経済成長率目標を6%台前半に引き下げている。GDPの成長率は1.67%とも言われ、「このままでは持たないのではないか」とささやかれている。

 

過剰な投資で、中国では高い経済成長率を維持する経済成長モデルも限界に達しており、夜逃げや倒産も増えている。アメリカが仕掛けた貿易戦争で、バブル崩壊が刻一刻と近づいている状況で、中国政府は消費の激減ぶりや地方政府の負債、外貨準備高の激減など、不都合な経済ニュースは報道してはならないと報道規制を強めている。

 

そこでアメリカとの関係では「合意を守るフリ」をして、全面的かあるいは一部の関税を撤廃してもらうことで、経済の減速に歯止めをかけたいという思惑があるのだろう。

 

そもそも履行を確実にするメカニズムづくりは難しい。構造改革の成果を測るには最低でも1年はかかるだろうし、その間、中国は時間稼ぎをすることができる。

 

アメリカの中国研究者のアーサー・ウォルドロン氏は今月11日、米保守系ラジオ番組で、中国がそのうち約束を反故にするのは自明だと述べ、「新幹線の技術を盗まれて痛い目にあった川崎重工に話を聞いてみるといい」と、アメリカは日本の知財侵害の事例から学ぶべきだと主張した。

 

合意内容の詳細は明らかになっていないが、もしトランプ政権が中国に屈したと思われるような合意を行えば、マルコ・ルビオ氏やテッド・クルーズ氏、チャック・シューマー氏などの反中強硬派の議員が党派を超えて結束し、「タフな合意内容ではない」と批判するとみられている。

 

 

トランプ政権は金融戦争に移行か

一方、中国との貿易戦争でアメリカの製造業や農業に悪影響が及んでいるのも事実。2020年の大統領選に向けて、トランプ大統領は今年3月末、ミシガン州やペンシルバニア州で演説をしたが、ラストベルトへの訪問は支持率低下への裏返しであるとも言われている。

 

2020年の再選を目指すトランプ氏としては、代替的な手段で同等の効果を持つものがあれば、乗り換えたいと考えるのも無理はない。その一つが金融戦争で、為替操作の防止を合意内に盛り込むことにしたのは、その兆しだろう。

 

中国では、国民が人民元をドルに換金するため、海外への外貨流出が止まらない。当初は国内の経済情勢に詳しい共産党幹部に限られていたが、いまは一般庶民も、中国経済の崩壊を見越して、元をドルに換金して海外に逃がしている。このため元は放っておけば、貨幣価値が下がってしまうので、中国政府はドルを売って元を買うという買い支えをしている。

 

もし人民元安が続けば、輸出に有利となるため、アメリカから為替操作国として認定される可能性がある。これを回避するには、外貨準備を使い続ける必要がある。外貨準備が尽きたとき、人民元の暴落から、国内のインフレが進み、暴動が多発するのではないかと言われている。

 

したがってトランプ政権は、貿易戦争で何らかの合意を見たとしても、今後も中国に対して対決を続けていくはずである。

 

 

「対中関係改善」に突き進む日本に必要な戦略とは?

一方、14日の日中ハイレベル経済対話、15日の日中外相会談で、日本は中国との関係改善を急ぎ、友好ムードを演出した。参院選に向けて対中関係改善が手柄となると考えているようだ。

 

背景にあるのは、「経済的に依存関係にある中国がつぶれては困るし、そもそも大きすぎてつぶせない」というあきらめだろう。

 

そんな日本において必要なのは、冷戦期にソ連に対してアンドリュー・マーシャル氏が取ったような戦略である。

 

「伝説の軍略家」と言われたアンドリュー・マーシャル氏は、3月に死去したばかりだが、旧ソ連の経済力の適正な評価を行い、ソ連側に多大な軍事費負担を発生させるコスト戦略を採用してソ連を自壊に導いたことで有名だ。これが「ソ連と共存するしかない」というデタントを超える鍵となった。

 

日本は「中国は大きすぎてつぶせない」という先入観にとらわれているのかもしれないが、中国のバブル崩壊は始まっており、今後の金融戦争次第では、中国経済が自壊し、場合によっては体制転換が起きて民主化が実現する可能性がある。

 

今日本に求められるのは、敵の勢力を客観的に見積もり、6月末に行われるG20などの場で中国の包囲網をつくっていくためのリーダーシップの発揮である。

(長華子)

 

【関連書籍】

幸福の科学出版 『愛は憎しみを超えて』 大川隆法著

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タグ: 米中貿易交渉  為替操作  中国  アメリカ  人民元  バブル崩壊  

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