保護主義とは言えないトランプ大統領の輸入制限

保護主義とは言えないトランプ大統領の輸入制限

 

《本記事のポイント》

  • 中国のダンピングは安全保障上の脅威
  • 原理主義的な自由貿易によって国家は強くならない
  • アメリカの世論も経済学者も原理主義的な自由貿易に疑問を呈し始めた

 

トランプ米大統領は、日本時間の9日未明に鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を正式に発表した。鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を上乗せする措置を23日から発動する。

 

中国の迂回輸出に対抗するため、全ての国・地域を対象に関税を引き上げるとしていたが、最終的な対象国は、カナダとメキシコを除く全世界の国と地域となった。日本などの同盟国については、安全保障や経済面での協議次第で、除外する可能性を示した。輸入制限は米通商拡大法232条に基づくものである。

 

また、貿易相手国がアメリカからの輸入に課す関税と同率の関税を、相手国からの輸入に賦課する「相互税(reciprocal tax /mirror tax)」の実行を計画していることも明らかにした。仮に中国がアメリカからの車の輸入に25%の関税を課すなら、アメリカも中国からの車の輸入に25%の関税を課すことを検討中だという。

 

トランプ氏は、輸入制限の文書の署名式で、ダンピングによってアメリカの鉄鋼業やアルミニウム業が「攻撃」されてきたことを強調。「これは安全保障上の問題であり、私は、政治家になるずっと前からこの問題について発言してきたし、政治家はなんらこの問題を解決してこなかった」と述べた。

 

さらに署名式に招かれた鉄鋼・アルミ業の労働者の一人は、「鉄鋼の輸入が増えた80年代に父親が仕事を失った。『今日仕事を失ったんだ』と語った父の目を忘れることができない」と述べた。

 

だがアメリカは、保守系メディアも含め、多くがトランプ氏の関税引き上げによる輸入制限に批判的だ。トランプの政策は「保護主義」で「内向き」で、世界のリーダーシップから降りたという見方が多い。

 

こうしたメディアによるトランプ氏への批判は本当に当たっているのか。

 

 

中国のダンピングは安全保障上の脅威

ホワイトハウスの発表によれば、2000年以降、アメリカの鉄鋼業の雇用は、5万4千人減り、アルミニウムでは同じ期間に4万人減ったという。2012年から、主要な6つのアルミニウムの精錬工場も閉鎖している。

 

だがアルミニウムは広範囲の通常兵器や航空機に使用され、鉄鋼は陸上作戦部隊が使う船や潜水艦、戦車、軽装甲機動車等に必要なため、安全保障上の問題に直結する。中国の輸出によってアメリカの産業が根絶やしになれば、自前で武器も製造できないという事態に陥りかねない。

 

中国は鄧(トウ)小平の改革開放政策以来、安い製品を作るための生産体制を整備するために、GDPの7割を生産体制の強化のために投資し続けた。つまり国家丸抱えで「構造的なダンピング体制」をつくり上げて、輸出力を増大してきた。その結果、アメリカの商務省のデータによると、2000年には、世界の鉄市場の20パーセントをわずかに超えていた程度の鉄の産出高は、2015年には60パーセントにまで上昇した。

 

中国の鉄鋼のダンピング問題に対し、アメリカおよびヨーロッパは、中国が2000年に世界貿易機関(WTO)に加盟してから公正なルールに従うように通告を重ねてきたが、中国は何度もルールに従うと言うのみで、対策を打たなかった。

 

中国との紛争を回避したいオバマ前大統領はこの問題を見て見ぬふりをしてきたが、中国の構造的ダンピング体制によって、世界中の人々の仕事が奪われてきたし、資本主義の体制も崩壊しかねない事態になっていた。政治的意志の欠如から起きたこの問題を、リーダーシップの発揮によって解決しようとしているのがトランプ氏である。

 

 

原理主義的な自由貿易によって国家は強国にならない

貿易において、一方の国がモノを買い続け、もう片方の国がその国から何も買わなければ、自由貿易は成り立たない。また、中国人民元を人為的にコントロールしているが、同じルールで競争していない国と自由貿易を続けると不公正なものになる。

 

さらに、中国がアメリカとの貿易を通じて貯め込んだ資金で、核・ミサイルや軍艦、人工島に軍事施設などを造って周辺地域を侵略しようとするなら、この現状を放置してはならないだろう。

 

原理主義的な自由貿易主義者は、トランプ大統領の政策を「保護主義」だとレッテルを貼るが、そもそも国は完全な自由貿易体制によって強くなるのか。

 

そもそも、アメリカの建国の父であるハミルトンは、1791年に「政府の支援なく近代産業が自ら発展するだろうと信じる者は間違っている」と論じている。つまり、建国直後のアメリカは保護主義的政策を取っていた。第一次大戦後、実質上、勝者だったアメリカが国際連盟に入らずに国内に力を蓄えたように、アメリカは幾度も保護主義的政策によって自国産業を復活させてきた。

 

このことは何もアメリカだけではない。戦後復興を遂げた日本も、完全な自由貿易によって発展を遂げたわけではなく、国家主導型の産業立国で、アメリカにモノを買ってもらうことで成長を遂げた。原理主義的な自由貿易主義者は、歴史をもう一度振り返ってほしい。

 

 

アメリカの世論も経済学者も"原理主義的な"自由貿易に疑問を呈し始めた

さらにアメリカの主要メディアの報道とは逆に、アメリカ国民の多くは、じつは自由貿易に反対しているという点も見逃せない。

 

ワシントンの公共宗教調査研究所(PRRI)の2016年度の調査によれば、白人の労働者階級のうち、「自由貿易は国民がよりよい商品を安価で購入できるので役に立つ」と回答したのは、33%にすぎず、「自由貿易は仕事を海外に奪われ、賃金を低下させているので有害だ」との回答が60%にも上っている。

 

グローバリズムを推奨する自由貿易主義者は、自由貿易によって、短期において損害を被る人が出ることを認めるが、長期においては「すべての人々は豊かになる」と論じようとする。だが、それを証明できた人は実はいない。経済学者のポール・サミュエルソン氏は、「自由貿易によって、長期にわたる所得の減少を被る集団が必ず存在する」と述べ、「すべての人が豊かになる」という自由貿易主義者の主張を一蹴する。冒頭の失業した鉄鋼労働者の父親がその例だろう。

 

その理由は、アメリカでは行われることがない、中国の商慣行に原因がある。中国では、先進国にある環境基準も労働法も守られていない。このため低賃金でローコストの生産が可能だ。しかし、アメリカの労働者が比較にならないほどの不利な条件下で、中国と競争を強いられているなら、競争条件の公正さの問題は、当然議論されるべきだろう。

 

また国民は、消費者である前に労働者でもある。低インフレの時代には、モノが安くなるより、職を失ったり、賃金が上がらなかったりすることのほうに不満を覚えるのは当然だ。消費よりも働くことのほうが人間の尊厳に直接かかわることだからである。

 

トランプ氏の政策の柱にあるのは、ケネディ大統領と同様、Welfare(社会福祉)ではなく、Workfare(雇用による福祉)とも呼べるもの。トランプ氏に保護主義のレッテルを貼るマスコミは、国民の消費者の側面ばかりに目を奪われ、雇用こそが最大の社会福祉だと考えるトランプ氏の意図を見落としている。

 

 

先進国へと脱皮を迫られる中国

焦っているのは中国だろう。米貿易赤字7962億ドル(約80兆円)のうち、対中赤字は全体の47%の3752億ドル(約40兆円)を占めている。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、日本時間9日未明、トランプ政権は、中国に対して、年間対米貿易黒字を1000億ドル(約10兆6200億円)減らす計画をまとめるように求めた。これは対中貿易黒字の25%に相当する。

 

これは裏返せば、経済成長を遂げようと思うなら、途上国のように輸出攻勢によって経済成長をしようとするのではなく、内需を拡大しなさい、それでこそ一流国の仲間入りができるというメッセージである。しかも不動産バブルを招いた政府主導による内需拡大ではなく、国民の消費拡大による内需の拡大が求められていると言える。

 

だが、80年代の日米貿易摩擦により、アメリカより内需拡大を突き付けられ、GDPの6割を消費で占めるまでになった日本と異なり、中国にとって構造転換は、体制転換を伴うものになる可能性がある。消費中心の社会をつくるには成長から取り残された人々の意見を聞く民主的な社会が必要だからである。

 

中国が巨額の貿易黒字を軍事費に転じ覇権拡大に結びつけてきたことは年を追うごとに明らかになってきた。これに対して、トランプ政権は関税による輸入制限を通して、「戦わずして勝つ戦略」を実行しようとしている。大川隆法・幸福の科学総裁は2016年12月、トランプ氏には天才的なところがあるとして、こう述べている。

 

「この中国の利益のもとであるところを、兵糧攻めで"締め上げ"、外貨を稼げない体質にする必要があるのです。要するに、元のレートもずっと"緩い"ままなので、これを"締め上げ"ていくことによって『適正なレベル』にまでしなければいけないわけです。そうすることによって、中国もそのようなことをできなくなってくるのではないでしょうか。この考え方のなかにあるのは、『平等』ではなく、『公正とは何か』という考えだと思うのです。

こうした考えは、世界全体で共通認識を得るところまではまだ行っていないでしょうが、トランプ氏が狂っているわけではありません。彼の考え方のなかには、何らかの天才的なものがあるのではないかと感じています」

(『繁栄への決断』第3章所収)

 

中国は、昨年12月の大型減税法案成立による「税金戦争」でアメリカ企業の脱・中国、アメリカ回帰という痛手を経験したばかり。次なる「貿易戦争」が体制転換を招くことがないよう、習近平国家主席は、独裁を維持しようとするだろう。

 

だが中国が先進国の仲間入りを果たし、世界のリーダー的立場を担うためには、輸出ではなく、世界からモノを買うことで世界を豊かにする義務を果たさなければならない。と同時に日本も、トランプ政権と歩調を合わせて、大型減税で企業を日本に呼び戻し、中国の軍事的な拡張を封じ込める立場に立つべきである。

(長華子)

 

【関連書籍】

幸福の科学出版 『繁栄への決断』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1785

 

【関連記事】

2017年4月号 アメリカ企業は愛国心を失っている ラルフ・E. ゴーモリー氏インタビュー

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2018年1月23日付本欄 トランプ政権が太陽光パネルと洗濯機の輸入制限を発動 戦わずして勝つ対中戦略

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2018年3月号 トランプ政権は、対中制裁に舵を切る ゴードン・チャン氏インタビュー

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タグ: 保護主義  トランプ大統領  輸入制限  貿易  自由貿易  経済成長  

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