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《本記事のポイント》

  • トランプ大統領が横田基地の演説で北朝鮮に警告
  • 来日に先立ち、トランプ氏は日本の北朝鮮への対応を疑問視していた
  • ミサイル迎撃も在韓邦人の救出もままならない状態から、「自分の国を自分で守る国」に

ドナルド・トランプ米大統領は5日午前、大統領専用機で横田基地(東京都)に到着し、およそ2000人の米軍兵士に向けて演説を行った。

「USA」「USA」という聴衆の掛け声に迎えられたトランプ氏は、ダークスーツジャケットを軍用のボンバージャケットにかえ、約20分に渡り演説した。

トランプ氏は冒頭で、「日本のためにリーダーシップを発揮してくれてありがとう」と、兵士に感謝を表すとともに、「日本はアメリカが数十年にわたってすばらしい関係を持つ重要なパートナーだ」と日米関係の重要性を強調。

その上で、核ミサイル開発を続行する北朝鮮に対して、次のように一歩も引かない姿勢を示した。

「私が大統領である限りアメリカは、圧倒的な能力と資金を駆使して常に勝利する。いかなる独裁者、いかなる体制も、アメリカの決意を過小評価してはならない」

「われわれは、わが国民、われらの自由、そして偉大な米国旗を守る中で、決して屈せず、迷わず、たじろがない」

「私が大統領である限り、アメリカはいつでも圧倒的な能力、資源、資金でアメリカの安全を守る」

北朝鮮問題を必ず終わらせるという、トランプ氏の覚悟がにじみ出る内容だ。

「武士の国なのに理解できない」

実は初来日に先立ち、トランプ氏が北朝鮮問題に関する日本政府の対応について疑問を呈していたことが4日、明らかとなった。

8月から9月にかけて、北朝鮮が日本列島上空を通過する弾道ミサイルを発射したが、日本政府はこれを迎撃しなかった。

これに対してトランプ氏は、東南アジア諸国首脳らとの電話会談や直接会談で、「自国の上空をミサイルが通過しているのに、なぜ撃ち落とさないのか」「武士の国なのに理解できない」などと、日本の対応に不満を漏らしていたという。

日本政府は、北朝鮮のミサイルが日本に落下する可能性はないと判断したため、破壊措置をとらなかったとし、「(北ミサイル対策は)一分のスキもない万全な態勢」だと国民にアピールしている。しかし、本欄でも指摘しているように、迎撃「しない」のではなく、迎撃「できない」というのが正しい( http://the-liberty.com/article.php?item_id=12911 )。

迎撃システムのパトリオットミサイルは、日本の大部分をカバーしておらず、音速の10倍近い速度で飛んでくるミサイルを撃ち落とすのは至難の業だ。同時に何発もミサイルを撃たれた場合、全てを迎撃できる可能性は低い( http://the-liberty.com/article.php?item_id=13644 )。

3万人の在韓邦人も救出できない日本

会談では、朝鮮半島有事の際の在韓邦人退避の方策について協議する方針だ。

マクマスター安全保障担当大統領補佐官は2日、「(アジア歴訪で)軍事措置の可能性について話さなければ無責任なことになる」と述べており、同盟国である日本が、有事に際して具体的に何をするのかを示す必要がある。

実際、韓国には3万人もの日本人が長期滞在し、年間で数百万人が訪問しているため、彼らを守るには、綿密な救出作戦が必要だ。しかし、自衛隊法では、自衛隊を外国へ派遣する場合、派遣先の国が自衛隊の受け入れに合意することが要件として規定されており、韓国の同意を得られるかは不透明。また、万単位の邦人をどのようにして輸送するかなど、課題は多い。

いつ北朝鮮有事が現実のものとなってもおかしくない状態で、いまだ在韓邦人の救出すら確実ではない日本の現状を見て、トランプ氏は何を思うのだろうか。

「武士の国」としての魂

アジア歴訪に向かう大統領専用機の中で、トランプ氏は報道陣に対し、「プーチンと会うことになると思う。われわれは北朝鮮についてプーチンの助けが必要だ。それ以外に多くの指導者とも会う」とも話しており、北朝鮮問題を解決するため、自国民の命を守るため、確実に手を打っている。日本政府にも、言葉だけではなく具体的な行動が求められる。

また、2月に北朝鮮がミサイルを発射した際、トランプ氏は「アメリカは日本の後に立つ(America stands behind Japan)」と発言している。そもそも北朝鮮は、アメリカではなく日本の隣国。日本が先陣を切って対応するのは当然のことだ。

ミサイル迎撃もできず、自国民の避難もままならない――。これでは「武士の国」の名が泣く。

しかし、日本国民の心の中に、「武士の国」の「魂」は、まだ消え去ってはいないはずだ。戦後70年経った今こそ、「自分の国を自分で守る」国への転換が必要だ。

(片岡眞有子)

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