第21代太平洋軍司令官として、太平洋・インド洋方面における米軍各部隊への最高指揮権を持っていたキーティング元大将が、緊迫する北朝鮮情勢に関する本誌インタビューに答えた。

現役引退後、6年ぶりに日本メディアの取材に応じた。

(聞き手 西幡哲)

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――北朝鮮による軍事行動の可能性と、アメリカ軍の動きについてどう見ますか。

キーティング: 私が太平洋軍司令官の任に就いていた時に比べて、確実に緊迫度は高まっています。ただ、アメリカとその同盟国は、長年、軍事演習などの準備をしてきました。トランプ大統領や、同盟国である日本と韓国のトップが決意すれば、極めて短い時間で軍事的な選択肢を実行に移せます。

そうなる可能性は低く、望んでもいませんが、準備はできています。

金正恩の行動は予測不可能

――金正恩労働党委員長は、8月中旬までにグアム攻撃の準備ができると述べていますが。

キーティング: 金氏の行動は予測が難しく、常軌を逸しています。グアムにミサイルを撃ち込めるという主張は、選択肢の一つを述べただけであり、あまり信用していません。単なる脅しだと見てはいますが、それに近い軍事攻撃に出た場合への備えはあります。

北朝鮮は核兵器以外に、通常兵器、使用可能な化学兵器や生物兵器もかなり大量に保有しています。北朝鮮の大砲や潜水艦、空軍などの能力については認識しており、核兵器使用についても、米軍の対応策に含まれます。彼らが地対地ミサイルを使えば大惨事となるため、使わないことを望みたいですが、これについても対抗措置は考えています。

アメリカが望むこと

――マティス国防長官が、北朝鮮の体制転換や自国民の破滅について言及しましたが、どんな意図があったのでしょうか。

キーティング: 金氏がアメリカや日本、韓国に軍事行動を取った場合、我々は、大統領の命令の下、北に重大な損害を与える準備があります。そのことへの警告だと思います。

――ティラーソン国務長官は、トランプ大統領とは対照的に、外交的解決を主張しています。

キーティング: 外交部門のトップという立場からの発言でしょう。

現太平洋軍司令官のハリー・ハリス氏も、「我々は、金正恩を屈服させるのではなく、正気に戻らせたいと願っている」と発言しましたが、アメリカとしても、数十年に渡る北朝鮮に関する外交的努力が実ることを望んではいます。金氏は、いかなる軍事行動も割に合わないことに気づくべきです。

中国の動向は影響するか

――北朝鮮を抑止するという中国の発言は信頼できますか。

キーティング: (間を置いて)中国を信用できる、と言いたい。トランプ大統領をはじめ、日米の多くの関係者が中国と協議し、その一部は実行に移されています。

――アメリカが北朝鮮に先制攻撃を加えた場合、中国は北朝鮮側につくとも発言しています。

キーティング: 中国の支援は望みたいですが、中国がアメリカか北のどちらのサイドにつくかは、トランプ大統領が先制攻撃を判断する際の決定的な要因にはならないと私は見ています。

――日本に対するメッセージ、特に日本の核武装について、ご意見はありますか?

キーティング: 微妙な問題ですので、お答えするのにふさわしい立場にはないと思いますが、日本のリーダーは正しい判断をすると確信しています。また、日本はアメリカの軍事行動を支援する準備があり、自衛隊は安倍晋三首相の指示に応える準備ができていると考えています。

私と私の妻は、太平洋司令官時代、多くの時間を過ごした日本をとても愛しています。日本を離れる時も、心は日本に置いてきました。日米友好の精神は、これからも重要です。

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