2017年6月号記事
マレーシア航空370便 謎の行方不明から3年
誰が何を隠しているのか
航空史上最大のスキャンダルを追う
南シナ海の上空で、乗員乗客239人を乗せた「マレーシア航空370便」が姿を消してから3年が過ぎた。さまざまな物証や専門家の分析から、南インド洋に墜落したとする通説を覆す真相が浮き彫りになった。
(編集部 山下格史、小林真由美、片岡眞有子)
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マレーシア航空370便 謎の行方不明から3年 誰が何を隠しているのか 航空史上最大のスキャンダルを追う Part 1
参考記事
写真:ロイター/アフロ
Shahrul Azman/Shutterstock.com
ナレンドラさん一家。右がシャルマさん。
2014年3月8日未明、マレーシアのクアラルンプールから中国の北京に向けて飛び立ったマレーシア航空370便(ボーイング777‐200型機)が、乗員乗客239人とともに行方不明になってから3年が過ぎた。
機体が見つからないまま今年1月に捜索は終了し、人々の記憶からも消え去りつつある。
愛する人に何が起きたのか
しかし、多くの遺族にとって、事件はまだ終わってはいない。
インド・チェンナイ在住の女性、チャンドリカ・シャルマさんは、370便の乗客の一人だった。国際団体の責任者として、モンゴルでの会合に向かっていた。
シャルマさんは、出発の直前まで、夫のナレンドラさんと緑豊かな郊外に建築予定の新居について話し合っていた。帰国後には、大学生の長女と家族3人(左ページの右写真)でヨーロッパ旅行も予定していたという。
ナレンドラさんは本誌の取材に、こう語る。
「事件から3年が経ちましたが、妻がいなくなった時の悲しみはいまだ鮮明で、この現実に直面する難しさを日々感じています。飛行機に何が起きたのか、決定的な情報もないため、私たち家族はいまだに気持ちの整理がつけられないままでいます」
マレーシア政府は、同便が南シナ海上空で急転回し、予定の航路とは真逆の南インド洋方面に飛び、墜落したと発表。今年1月、成果がないまま南インド洋での捜索を打ち切った。
これに対し遺族は、3月にマレーシアで開催された追悼集会で、捜査の続行と拡大を訴えた。同月、米サウスカロライナ州では、マレーシア政府と米ボーイング社に対して原因究明を求める訴訟が始まった。
マレーシア航空やマレーシア政府が情報公開を拒む中、真相究明を求める声が高まっている。
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