2017年1月号記事

2●17年 日本のチャンス

「北方領土」解決の鍵は、鉄道にあり

プーチンの「世界物流革命」

ロシアのプーチン大統領の来日で北方領土問題の解決が期待される。

しかし、プーチン氏はもっと壮大な構想を持っているようだ。

(編集部 河本晴恵)


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日本とロシア。平和条約を締結していない両国がここ数年、急接近している。

ウラジーミル・プーチン大統領が就任した2013年以降、日露首脳会談は11回に及ぶ(11月20日時点)。その中で、プーチン大統領の来日が模索されてきた。ロシアのクリミア編入で先延ばしとなっていたが、ようやく12月に安倍晋三首相の地元・山口県長門市での首脳会談が実現する見通しだ。

両国の長年の懸案となっている北方領土の返還に期待を膨らませる日本だが、プーチン大統領は慎重だ。

「中国とは40年間の交渉の末、領土問題を解決した。日本とはまだその段階にない」

9月のインタビューでこう述べ、日本側をけん制した。

すれ違う日露の思惑

日本側も、タダで島を返してもらおうとしているわけではない。今年5月にはロシアに対し、極東の開発や企業の進出、医療、工業化の推進など8項目での経済協力を提案。9月にロシア経済分野協力担当大臣を任命し、本気度をアピールした。

一方のロシアは、10月に68項目について協力を要請。農産品の対日輸出や極東のエネルギー開発などが柱だ。その中には、サハリンから日本へのパイプラインの新設や、ウクライナから編入したクリミア半島付近の開発など、政治的な課題と切っても切り離せないものも含まれていた。

「(国境をまたいだパイプラインの新設は)夢物語だ」

「ロシアは日本に高いボールを投げ、北方領土交渉で日本の譲歩を引き出そうとしている」

メディアで報じられる日本の政府関係者の反応は、しらけたものが多かった。

しかし、ロシアが何を考えているのか、もっとよく見る必要がある。

次ページからのポイント

そもそも解説 北方領土問題って何?

インタビュー 北方領土より中露接近を防ぐことが大事 / 北野幸伯氏

ロシアの考える鉄道革命

インタビュー ロシアは世界を鉄道でつなごうとしている / 山口英一氏

日露をつなぐ新幹線が物流を大きく変える