キューバとアメリカが国交正常化へ オバマ政権浮揚の起爆剤になるか?

2014.12.19

ジョン・F・ケネディ大統領当時のキューバ危機などで、対立していたアメリカとキューバが雪解けに。(画像は U.S. Embassy New Delhi / Flickr )

アメリカのオバマ大統領は17日、50年以上にわたって外交関係を途絶させていた隣国のキューバとの間で、国交正常化に向けた協議を行うと電撃発表した。キューバ側も同日、スパイ容疑などで服役していた米国人1人を釈放。両国は関係改善の緒に就いた。

そもそも、アメリカとキューバは、なぜ対立していたのか。

発端は、キューバ人のフィデル・カストロ氏らが、1950年代末、アメリカの保護を受けていたバティスタ政権を倒して、社会主義国家を樹立した、いわゆる「キューバ革命」にさかのぼる。

その後、カストロ氏がアメリカの資産没収に向かったことで、アメリカ側は、同国と国交を断絶。経済制裁を加えた。そして冷戦のさなかの62年、ソ連が、キューバにミサイル基地を建設し始めたことを受けて、当時のアメリカ大統領のジョン・F・ケネディ氏が、キューバを海上封鎖(キューバ危機)。しかし、ソ連が崩壊した後も対立関係は続いた。

国交正常化の様々な要因

国交正常化自体は、オバマ政権が誕生した当初から、オバマ氏がそれを実現させたいと意気込んでいた。実際、2009年には、キューバ制裁の一部を緩和している。

大きく国交正常化に動いた背景には、ロシアのプーチン大統領が今年7月、約14年ぶりにキューバを訪問し、ソ連時代の債務を9割免除したなどがあると言われている。つまり、ロシアがキューバに接近する動きを阻止するためだ。

また、フロリダ州などにキューバからの亡命者と難民が相次ぎ、移民問題になっていることも理由の一つ。これに対応することは、移民政策に熱心なオバマ氏の考えとも合っている。

オバマ政権は浮揚しない

では、キューバとの関係良好化は、求心力が弱いオバマ政権を浮揚させる起爆剤になるのか。

結論から言えば、そこまでの過大評価はできないだろう。アメリカ国民にとって、キューバへの制裁は、冷戦時代の記憶に過ぎない。1100万人しか人口がいないキューバとの経済的・人的交流が増えたとしても、アメリカへの影響はそれほどないと考えられる。

むしろ、懸念すべきは、制裁を解除した目的が明確ではないこと。

確かに、キューバへの制裁は、冷戦時代には国民の合意を得ていた。それがソ連が崩壊してもなお、制裁が継続されたのは、キューバ内の人権侵害を問題視していたためだ。

しかし、それが改善された形跡がない現時点で、国交正常化に動いたとすれば、これまでの制裁は何だったのか。この問題は、アメリカから制裁を受けているイランや北朝鮮などとの関係に影響を与えかねない。

今回の関係改善が、2016年に行われる大統領選に向けたパフォーマンスであれば、制裁の正当性に亀裂を生み、将来に禍根を残す可能性もある。国交正常化の大義を示すべきだろう。(山本慧)

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2014年12月7日付本欄 世界の核兵器政策<中東編> アメリカはイランの核開発を止められるか?

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