地方主権を目指す首長が国政を侵食する危険

2013.01.22

昨年12月の衆院選で橋下徹・大阪市長、河村たかし・名古屋市長、嘉田由紀子・滋賀県知事らが国政進出を目指しそれぞれに新党を結成した。その結果、橋下大阪市長が代表代行を務める「日本維新の会」(代表・石原慎太郎)は、合流した既成政党からの合流議員を含めた57人を衆院へ送り込むことに成功した。今夏の参院選でも日本維新の会が一定の勢力を獲得することになりそうだが、本当にこの政党に国政を担う力があるのだろうか。

日本維新の会以外の政党については、河村市長が代表を務める「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」が衆院選直前に離党した亀井静香氏を除く16人が全員落選し、政党としては事実上消滅。

また、嘉田知事が立ち上げた「日本未来の党」には、小沢一郎氏が代表を務める「国民の生活が第一」が合流したが、衆院選ではもともと61あった議席を9まで減らす惨敗に終わり、嘉田知事と小沢氏の対立も表面化。嘉田知事と阿部知子衆院議員が離党した。小沢氏は党名を「生活の党」と改め、嘉田知事側は改めて政治団体「日本未来の党」を立ち上げた。

河村、嘉田両氏は、地方の首長のまま国政に進出することはできなかったが、橋下大阪市長は、自身が国会議員となってはいないものの、政党幹部としての役割を担っている。それについて大阪の市民オンブズマン「見張り番」の辻公雄代表他5人が、12月3日、市長の給与の返還を求める住民監査請求を行っている。

監査請求書によると、橋下市長は日本維新の会代表代行に就任した11月17日から12月3日までの17日間のうち計13日間、公務日程を入れず全国遊説などをしていたという。橋下市長は2011年の大阪市長選で対立候補であった平松邦夫前市長を市職員が支援し、勤務時間中に選挙活動を行っていたことなどを批判すると共に、昨年7月には市職員に対し、国家公務員並の政治的行為の制限を課し、政治的中立を確保することを目的とした「政治的中立性を確保するための組織的活動の制限に関する条例」を制定している。辻氏は「橋下氏の選挙活動は、自身が作った条例に違反している」と指摘する。

これに対し、橋下市長は11月末の記者会見で、「大阪を変えるには日本のシステムを変えないといけない。僕は職員とは違う形で国の制度を変えようとしており、公のための仕事としては全く一緒だ」と反論。年初にもツイッターで「維新の政治活動も市民のためです。選挙運動で作られる権力機構によって行政組織は規定されるのです。選挙運動は、市長の役所の仕事よりはるかに価値の高いものです。役所の進むべき道が決まるのですから」と投稿している。

だが、「ダム建設」「新幹線新駅建設」をことごとく「もったいない、無駄」と切り捨て、「卒原発」を掲げる嘉田知事も、「大阪の利益さえ守れればいい」と日本全体の防衛には無頓着な橋下市長も、国政を任せられる人物ではなさそうだ。

今夏の参院選で、無責任なマスコミがもてはやす「地方維新」や争点を単純化させる「新党乱立」の流れは、日本の国益を損なうだけだ。国民も「誰が選ばれても同じ」と無関心にならず、「誰が正しいか」ではなく「何が正しいか」を真剣に見極めて投票すべきであろう。(宮)

【関連記事】

2013年2月号記事 2012衆院選 「国防強化」「原発推進」 歩むべき道を示した幸福実現党の戦い

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5375

2012年12月15日付本欄 自公300!? マスコミの当落予想は「選挙妨害」だ

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5311


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