「法の支配」で中国を牽制できるのか? 安倍首相が対ASEAN外交5原則
2013.01.20
安倍首相は訪問先のジャカルタで18日、対ASEAN外交5原則を発表した。近年活発化する東シナ海・南シナ海などでの中国海軍を牽制するのを目的に、アジア太平洋地域での平和と繁栄の実現を目指す。
5原則は以下の通り。
(1)普遍的価値の定着・拡大に向けて努力する
(2)「力」でなく「法」が支配する、「公共財」である自由で開かれた海洋をASEAN諸国と共に全力で守る。米国のアジア重視を歓迎する
(3)経済連携のネットワークを通じて日本経済の再生につなげ、ASEAN諸国と共に繁栄する
(4)アジアの多様な文化・伝統を共に守り、育てていく
(5)若い世代の交流で相互理解を促進する
ここで注目したいのは、この外交5原則では、「法の支配」を重視していることだ。
しかし、中国が必ずしも国際法を遵守する国ではないために、「法の支配」の下には入らない可能性があることを認識しておかなければならない。
1992年2月、中国は「領海法」を制定した。同法では、西沙諸島・南沙諸島・尖閣諸島などを中国固有の領土と明記、領海を侵犯した外国の軍用船舶を排除・追跡する権利も付記している。同法は今日の中国の海洋進出の正当性を主張しており、この背景には、本来の中国領土としている清朝の最大版図の復興を目指す「中華思想」がある。ここからは、国際法よりも国内法を優先させていることが分かる。
また中国は、日本の沖ノ鳥島については「サンゴ礁であるがゆえに、領海は認めるが排他的経済水域は認めない」としているが、不当に実効支配している南沙諸島については、同じサンゴ礁であるにもかかわらず、領海と排他的経済水域の双方を主張している。中国が自国の国益にかなう際にだけ、国際法に則った発言をすることがこれだけ見ても明確に分かるだろう。
残念ながら、国際法を部分的にのみ適用する国家に対して、「法の支配」だけでは対処できないだろう。そのためまずは、中国が軍事国家であり、国際法に則らない可能性があることを認識する必要がある。その上で、アメリカやASEANと中華包囲網を構築しつつも、「万が一の場合は武力行使も辞せず」という断固とした態度が、今の日本には必要なのではないだろうか。(飯)
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