中国の「債務の罠」とトンガの苦境 ─ 南太平洋の主権を脅かす経済的浸透【チャイナリスクの死角】
2025.10.03
画像:jixiang - stock.adobe.com
国際政治学者
佐久間 拓真
(ペンネーム)
国際政治の中でも特に米中関係、インド太平洋の安全保障、中国情勢を専門にし、この分野で講演や執筆活動、現地調査などを行う。
南太平洋の小国トンガは、美しいサンゴ礁と王政の伝統で知られるが、近年、中国の経済的影響力がその平和を蝕んでいる。
中国の一帯一路(BRI)構想を通じた巨額融資が、トンガを債務の泥沼に陥れ、「経済的侵略」の象徴となっている。2025年現在、トンガの対中債務は約1億2000万米ドル(約1,800億円)に上り、国内総生産(GDP)の25%を占める。この負担は、2022年のハンガン火山噴火やサイクロンなどの自然災害で財政が悪化した同国を、返済の重圧で追い詰めている。
オーストラリアのシンクタンクLowy Instituteの2025年5月報告書によると、トンガの2025年債務返済額はGDPの約4%に達し、世界で3番目に高い水準だ。返済総額の80%が中国向けで、保健や教育予算を圧迫。インフラ整備を名目とした融資が主で、道路や港湾プロジェクトが挙げられるが、同シンクタンクの分析では、トンガの中国融資プロジェクトの85%が債務苦の兆候を示している。これにより、トンガ政府は新たな融資を求めざるを得ず、債務の連鎖が深まる「債務の罠」の典型例となっている。
債務依存で外交・軍事的譲歩を迫る
中国の戦略は、単なる援助ではない。南太平洋での地政学的影響力拡大を狙い、債務依存をテコに外交・軍事面での譲歩を引き出す。
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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