釈量子の宗教立国への道 [第8回] - "元首不明"は無責任体制の原因
2024.12.24
2025年2月号記事
第8回
釈量子の宗教立国への道
幸福実現党党首が、大川隆法・党総裁による「新・日本国憲法 試案」の論点を紹介する。
幸福実現党 党首
釈 量子
(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/
"元首不明"は無責任体制の原因
第四条
新・日本国憲法 試案〔第四条〕
大統領は国家の元首であり、
国家防衛の最高責任者でもある。
大統領は大臣を任免できる。
前稿では、議会から独立し、強い権限を持った行政府を置く「大統領制」の構想を紹介しました。次の憲法試案〔第四条〕は、その大統領をさらに「国家元首」として明確化する条文です。
今の日本では、「元首」が誰なのかはっきりしていない問題があります。元首の定義を「行政の長」とするなら、実質的権能を持つ総理大臣となります。一方、「外国に対して一国を代表する存在」とすれば、「日本国及び日本国民統合の象徴」(現行憲法第一条)である天皇だとする考え方もあります。実際、外交儀礼の場において、天皇は元首として礼遇されます。2024年9月に天皇・皇后両陛下がイギリスを訪問された際には、「41発の礼砲」という最高位の待遇で迎えられました。
学術的にも、そのどちらかとするものや、「元首不在」とするものなど、さまざまです。
誰が戦争・国防の最終責任を取るのか
この曖昧さは"建前論上の混乱を招く"ことに留まらない、大きな問題を含んでいます。
大川隆法・党総裁は「首相が元首なのか、元首でないのか。どちらも、よく分からない状態で、結局、権力の中心がどこにあるかが分からないんですよね。これが、無責任体制が発生する原因の一つですよ」(*1)と洞察されています。
突きつめると責任の所在が分からない──その弊害は、実は常日頃、国家運営のさまざまな問題に見られていますが、特に国家防衛の危機に際して顕著に現れます。大川総裁はこう指摘します。
「もし、日本が再び戦争を起こし、その戦争が国際社会で認められず、戦争責任を問われることになった場合、その責任は大統領が取るべきです。(中略)大統領は、戦争をするときには、当然、『自分の首が飛ぶかもしれない』ということを覚悟しなければいけません。死刑になる覚悟をしなければいけないので、『戦争をするかどうか』ということは、当然、重大な判断になるわけです。
『いくら判断をしても、誰も責任を取らない』というような制度であっては、やはり問題があります」(*2)
それゆえ〔第四条〕では、大統領を「国家防衛の最高責任者」とも明示しているのです。
ちなみに2009年に同憲法試案を発表した時、右翼団体の人々が条文における天皇の扱いを問題視し、幸福実現党本部に"ご挨拶"に来られたことがあります。こうした人々は、「あくまで天皇を元首にしたい」と考えているのかもしれません。自民党の改憲案も、天皇を元首と明確に位置付けていますが、それはかえって天皇を危険に晒しかねません。
(*1)大川隆法著『猛女対談 腹をくくって国を守れ』(幸福の科学出版)
(*2)大川隆法著『新・日本国憲法試案』(幸福の科学出版)
トランプ氏に見る大臣登用のダイナミックさ
さらに試案〔第四条〕では「大統領は大臣を任免できる」と、明確かつシンプルに示されています。
現行憲法は大臣について、「その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない」(六十八条)としていますが、憲法レベルでそのような縛りは必要ない、という意図も試案にはあります。
ただでさえ日本は、大臣になりたい国会議員が大勢いることもあり、実際に民間人が入るケースは非常に稀です。しかし民間には、選挙に時間や労力が割かれることを嫌いながらも、国の発展に資する能力がある人は大勢います。
現にトランプ次期大統領は、実業家のイーロン・マスク氏、ビベック・ラマスワミ氏を「政府効率化省」のトップに据え、300兆円相当の政府支出を削るという革命的な挑戦を行う予定です。その他にも、ヘッジファンドや投資銀行のトップ、FOXニュース司会者、経済学者など、数多くの実力者を閣僚として招いています。このドリームチームで、通常2期8年かけてやれるかという仕事を、4年で断行しようというのです。
日本も国会議員以外からも、トップを補佐する「賢人」を求めるカルチャーがあってしかるべきであり、そこに憲法レベルで制限をかけるべきではありません。
制度の限界や戦争の危機が迫るダイナミックな時代において、やはり行政の長を「元首」として、責任を明確化する体制が求められます。
元首不明の弊害は戦争時などに問題となる。
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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