宇宙にも似た、壮大な心の世界に対する畏敬 映画「インサイドヘッド2」【高間智生氏寄稿】
2024.08.11
全国で公開中
《本記事のポイント》
- 思春期の大敵、インターネットとSNS
- ありのままの自分を客観的に見つめ、受け入れることの大切さ
- 人間の心という、宇宙にも似た壮大な世界への畏敬
本作品『インサイドヘッド2』は、心理学者も参加して作られた、完成度の高い思春期マニュアルともいえるディズニーアニメ。製作総指揮は4つのアカデミー賞を受賞したハリウッドアニメを代表する名匠ピート・ドクターで、彼の心温まる作風がにじみ出ている。
思春期を迎えた主人公の少女ライリーが、高校入学を控え、新しく登場する思春期特有の複雑な「不安」などとの付き合い方を学んでいくプロセスが、物語仕立てで描かれている。
友達との付き合い方の難しさや、生きづらさを感じている思春期の子供たちへの愛あふれる応援歌になっている。
思春期の大敵としてのインターネットとSNS
映画の中では、思春期の子供たちに極めて有害な影響を与えるとして批判されているインターネットやSNSへの依存を避けるべきことがさりげなく描かれている。
アイスホッケーチームの合宿に参加したライリーが、合宿期間中スマホをいじらないように没収されるのだ。
アメリカでは、思春期の危機を呼び込む存在としてネット空間、特にSNSの影響が取り沙汰され、規制が必要だという議論も上がっている。
インスタグラムの見すぎで拒食症になったり、ひどい場合は自殺したりする子もいるという。SNSを通じたイジメで不登校や引きこもりになったり、自殺を考えるようになるケースは、日本でも増えているようだ。
映画では、心が不安に押しつぶされるような心理的危機にあって、主人公がスマホやSNSを使えないことで、かえってスムーズに心の安定を取り戻し、葛藤の嵐のなかを無事に乗り越えていく様子が描かれている。
ネット依存を通じた思春期の危機の背景には、霊的な世界からの悪しき働きかけも影響している。このことについて、宇宙のメシア存在の一人であるR・A・ゴール※は次のように指摘している。
「インターネット、YouTube、全部"ウィルス"ですよ。(中略)悪い情報をいっぱい拡散して、拡散して。あれは"ウィルス"ですよ、本当ね。"ウィルス社会"なんですよ、今。だから、こういうのが流行ってるんで。"ウィルス社会"を根絶したかったら、『嘘をつかない』、『人の悪口を言わない』、そして、『神仏の悪口は言わない』、『信仰深い人たちを傷つけない』。こういうことが大事であると思うし、教育の根本でもなければいけないと思っていますね」。(『中国発・新型コロナウィルス 人類への教訓は何か』第二部 R・A・ゴールのメッセージ)
※こぐま座アンダルシアβ星の宇宙人。宇宙防衛軍の司令官の一人であり、メシア(救世主)資格を持つ。宗教家的側面を併せ持ち、惑星レベルで優れた文明をつくる力を備えている。
ありのままの自分を客観的に見つめ、受け入れることの大切さ
また映画は、思春期の危機から心を守るために、"ありのままの自分"を受け入れることの大切さを訴えている。
ケルシー・マン監督は本作について「この映画は、 自分自身を受け入れることをテーマにしています。ダメなところも含めて、自分を愛すること。誰しも愛されるために、完璧である必要はないのです」と語っている(パンフレットより)。
映画の制作にあたっては、思春期心理学者とのディスカッションや、実際に思春期の子供たちに複数ヒアリングをするなどして、思春期の心の脆さや、その安定を守るために必要な要素などを考慮しながら、心の中を映像化することが試みられたという。
エンターテイメントとしての面白さや楽しさを保ちつつも、子供たちの心のなかに生まれる危機をいかにして回避し乗り越えていくかという、現代社会が抱えている困難な問題の解決に真剣に向き合っていることが伝わってくる。
人間の心という、宇宙にも似た壮大な世界への畏敬
映画の中で、"本作の目玉"として、力を入れて描かれているのが、心の奥底に広がる「信念の泉」だ。これは、人生で経験するさまざまな出来事が流れ込む大きな海のような存在で、一つ一つの体験が積み重なって自分とは何者かという「信念」が生まれる源泉として描かれている。
喜びや不安といった人間の行動に直接影響与えるのが表面意識だとすれば、さらにその奥にあって、深いところから人間を衝き動かしている潜在意識と言ってもよいだろう。
本作のプロダクション・デザイナー、ジェイソン・ディーマーが「〈信念の泉〉は息を呑むような場所にしたかったんです。感情たちがあれを目の当たりにした時に、畏怖の念に打たれるのを狙いました」と言っている通り、人間の心の複雑さが、宇宙にも匹敵する深みを持っていることを表現したかったのだろう。
私たちが畏敬の念を感じるのはどのような時だろうか。一つには、人間の魂を創造し、その魂たちに様々な経験を積ませる修行の場としてこの宇宙を創造した創造神の存在を確信した時、私たちはその存在に畏敬の念を感じるのではないだろうか。そして、そうした畏敬の念こそが、人間の精神的荒廃や危機を食い止め、前向きに生きつつ、他者をいたわり、ともに健全な社会をつくっていくことを可能にするのだろう。
「あなたがた一人ひとりは、西洋で言う『神』、東洋で言う『仏』の一部です。あなたは、『超自然的で、全能かつ永遠なる存在』」の一部なのです」(『救世の法』より)
自分の心の中に無限大に広がる大きな海のような神秘的存在があることを教え、自分と他人の心の根源に対して畏敬の念を持ちつつ生きることの大切さを伝える本作は、心の苦しみや生きづらさを抱えた思春期の子供たちへの、今必要な応援歌だと言えるだろう。
『インサイドヘッド2』
- 【公開日】
- 全国公開中
- 【スタッフ】
- 製作総指揮:ピート・ドクターほか 監督:ケルシー・マン
- 【配給等】
- 配給:ディズニー
- 【その他】
- 2024年製作 | 96分 | アメリカ
公式サイト https://www.disney.co.jp/movie/insidehead2
【関連書籍】
【高間智生氏寄稿】映画レビュー
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